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トップアイドルのひみつ -2-

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 仕事が終わったら、HAYATOの楽屋で待ち合わせ。……なんて、そんなこと約束してあるわけじゃないけど、俺の足は今日もやっぱり勝手にそっちに向かってしまう。テレビ局は広いから楽屋の場所は毎日違うんだけど、あの飴のおかげで他の人より少し利くようになったこの鼻がだいすきなHAYATOの居場所を教えてくれるから、迷ったりなんてしないよ。

「おじゃましまーす!」

 大好きな恋人にとりあえずひと目会いたくて着替えもそのままに、俺はお目当ての部屋のドアを勢いよく開けた。ここまではいつもと同じ光景だ。けれどそれに続くはずの返事が聞こえなかったから、俺は首を傾げた。いつもなら可愛い恋人はすぐに俺の名前を呼んで、にこにこ迎え入てハグをして、全力で喜んでくれるのに。

「HAYATOー?」

 もしかしたら留守なのかな、でもHAYATOのにおいしたのにな……。そう思いながら名前を呼んで楽屋を覗き込んでみると、入り口に背を向けて置いてある三人掛けの真っ白なソファの端っこから猫耳と同じ夜色の髪の毛がちょこっと見えた。ああ、疲れて寝ちゃってるのかな?じゃあ起きるまで傍で静かにしていよう。そう思って、足音を立てず近づいてみる。そこにいたのは、HAYATOと――もうひとり、予想していなかった人物だった。

「HAYA、……え、トキヤ? めずらしー…」

 さっき俺がHAYATOだと思ったあのソファからちょっと覗いてた髪の毛は、トキヤのものだったんだ。そうしてHAYATOはというと、ソファに仰向けに寝転がったトキヤのおなかを枕にするようにうつぶせに重なって、二人仲良くステージ衣装のまま、気持ちよさそうにすぅすぅと寝息を立てている。
 今日はST☆RISHの6人での仕事だったからもちろんトキヤも一緒に仕事で、局内にいるのは何もおかしくないんだよ。でもHAYATOのところにトキヤがいるのは、正直いってめずらしい。しかもこんなに無防備にうたた寝してるなんて。さっきまでの撮影でかっこつけてたお前はどこいっちゃったの?ああでも、HAYATOとトキヤが仲良くお昼寝だなんて可愛いしかいえないよ、こんなの反則。

「……かっわいーなぁ」

 恋人が自分以外と寝ているなんて、普通だったら怒るべき場面なんだろう。けれど俺の頭にはそんな選択肢はぜんっぜん思い浮かばなくて、とにかく目の前の可愛い光景を瞼に焼き付けておこうとそれだけで精一杯だった。
 トキヤとHAYATO、ふたりぶんの寝息だけが聞こえる静かな部屋に、俺のしっぽが左右にぶんぶん揺れる音がする。これで起こしちゃったらどうしよう、そうは思ってみてもばか正直な俺の尻尾は止まってなんかくれやしない。
 楽屋には毛布も何もないからちょっと寒かったのかな、HAYATOとトキヤはお互いの黒い尻尾がお互いを暖めるようにくるんと腰や脚に巻きついてて、それがまた可愛さを増していた。
 ふたりを起こさないように、そおっとソファの横にしゃがんでみる。目の前にあるHAYATOの顔は、しあわせそのものって感じに緩んでいて、ひたすら無防備だ。

「あ、よだれ」

 服が捲れ上がって白い肌が見えちゃってるトキヤのおなかに、もうひといきで落ちちゃいそうなHAYATOのよだれを見てるとなんだか可愛くて笑ってしまう。そして、同時に生まれてくるのは愛しさだ。

「はーやと。ね、トキヤに、怒られちゃうよ……?」

 目の前の恋人が起きちゃわないようにちっちゃな声でそう言って。俺はそのまま、さわり心地のいいつやつやのほっぺたに手を添えると、ちゅっと触れるだけのキスをした。
 瞬間、ぱぁっと朱をさしたように赤くなるHAYATOの頬。眠っていても俺のキスがわかるんだって思うとどうしようもないくらいうれしくって、今度は無防備にゆるくあいているさくらんぼみたいなくちびるへとキスをする。

「ん、……っは、」

 予想はしてたけど一度じゃとまらなくて、二度、三度と回数を重ねる。そのうちに、俺の舌は勝手にあつい口内へと侵入してしまった。探り当てたあまい舌をちゅうっと吸って、その裏側をくすぐるようになぞってみれば、猫耳がぴくんってうごく気配がする。キスを続けながらその魅惑のふさふさを撫でたところで、ようやくHAYATOは甘えるような声をあげて目を開けた。

「ん……、んぅ?」
「HAYATO、おはよ」
「……あれ、音也くんがいるよぉ? ボク、夢みてるのかにゃ……」
「夢みたいにきもちい?」
「――うん。もっと、してほしいにゃあ」

 うん。HAYATOがすきなだけしてあげるよ。HAYATOが喜んでくれることなら、いくらだって、何だってやってあげる。
 寝惚け眼のかわいい恋人のおねだりに応えようと、もっと深いキスができるように体勢を整えて、HAYATOのぷるぷるのくちびるに触れようとした瞬間だった。
 頭上から、焦ったような怒ったような、この場のあまい雰囲気を粉々にしてしまう破壊力をもったトキヤの声が降ってきたのは。






改定履歴*
20120512 新規作成
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