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キミが教えてくれたこと -3-

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 あれから一ヶ月経った今、ボクと音也くんの関係はまだ続いている。
 もちろん、ボクは新人さんをつまみ食いするのは慣れているし、音也くんはばれないようにこうしようねっていうボクの言うことを素直に聞いてくれるから、表面上は何も変わらない。収録で顔を合わせれば仲良く話して、時間があれば一緒にごはんをたべにいったりする、傍から見るだけなら仲のいい先輩後輩の関係だ。

 けれどその一方で、ボクは自分が少しずつ変わっている自覚があった。音也くんと会う時にはホテルじゃなくて今まで誰も上げたことのない自分のマンションに呼ぶようになったし、音也くん以外の男の子と一緒に寝ることがすごく少なくなった。どうしても音也くんと会えない日に仕方なく他の子とヤったこともあるけど、不思議と全然気分が乗らない。音也くんのぽかぽかあったかいからだと、耳元で聞こえるとろけてしまいそうに甘い喘ぎを思い出して、何か違う、と思ってしまうんだ。


「HAYATO……? 何か、考えごと?」
「ん? ――ううん、ただ今日は、音也くんにいいこと教えてあげようかなって思って」
「ぁ、いい、こと?」
「そう」

 そんなことを考えていたら、対面座位で抱き合っていた音也くんに不思議そうに顔を覗き込まれてしまった。初めは挿入だけで痛がっていた彼も随分セックスに慣れたみたいで、最近ではもっともっとって自分から腰を動かすこともめずらしくない。今だって、ほらね、『いいこと』に反応してきゅうって締め付けてきてる。きっと無意識なんだろうけれど、キスすらも知らなかった彼をこんな風に育てたのがボクなのかと思うとすごく嬉しくなる。


「ここ、かな?」
「え、え……っぁ、ひっ」
「あったりー!」
「うぁ、や、何、なにそこやだ、そこだめぇっ」

 期待に満ちた目でボクを見る音也くんのからだをベッドに倒し、なめらかなふとももに手を添えてぐっと開かせる。ボクのが届くいちばん奥より少し手前、今までわざと避けていた音也くんがだいすきな場所をぐっと突き上げるようにすると、彼は目を丸くしてがくんとからだを仰け反らせた。

「駄目じゃないでしょ? こういうときは何て言うんだった?」
「あ……き、きもちいい、って」
「そうそう」
「っひ、また……! や、ぁぁっ、HAYATOまって、ソコきもちい、から、まってぇっ」
「惜しいにゃあ、『きもちいい』から、『もっとしてください』、だよ」
「あぁあ! ひゃあっ」

 気持ちよすぎて無理、ってなってる音也くんを追い詰める行動とは対照的に、優しい声で何て言えばいいかを教えてあげると、彼は素直にそれを口にする。こんなところが、ほんとうに可愛い。一歩この部屋を出ればたくさんのファンを魅了する売り出し中のアイドルの音也くんのこんな可愛さを知っているのは世界中でボクだけ。アイドル雑誌のページをいくら捲っても見られない上気した色っぽい表情も、整ったくちびるから零れるあまい喘ぎ声も全部、ボクだけのもの、だ。
 ねぇ音也くん、もっと気持ちよくさせてあげるから、もっとキミの可愛い姿をボクに見せて。

「音也くん、ナカだけでイけるようにしてあげるからね」
「は……?」
「ここをね、こうやって、」
「っ!! ひ、ぅ、やっ!」
「キモチいーでしょ? ここぐりぐりってしながら前扱いてたら、そのうち条件反射で後ろだけでイけるようになるよ」
「あ、う、…ぁっ、ひ…っ」
「ココ、慣らしたら信じられないくらい気持ちよくなれるからね。がんばろ?」

 音也くんのいちばんきもちいいところを先端で小刻みに引っかくように刺激しながら、さっきからだらだらとはしたなく涎をたらしている音也くんの性器をてのひらで包んで、射精を促すように擦ってあげる。音也くんは顔を真っ赤にしてボクの手の動きを制止するように手を重ねてきたけれど、その手にはちからなんてちっとも入っていなかった。まるでふたりで一緒に自分の性器を扱いているような倒錯的な様子から目を放せなくなっている彼の大きな目には涙がたくさんたまっていて、今にも零れ落ちてしまいそう。その雫を拭ってあげようと手を伸ばした瞬間だった。

「ぅ、あ…っ、は、HAYATOも、あぅ、…なかだけで、イけるの……?」



 『HAYATOも、ナカだけでイけるの?』

 音也くんの言葉が耳に届いた瞬間、なんだか一瞬時が止まってしまったような気がした。そうだ、ボクと音也くんが今セックスをしているのは、この業界の掟をしらないまっさらな彼が可愛かったから。そうして彼は、ボクがセックスを教えてくれていると思っているだけだ。
 今はボクの肌しか知らない彼もそのうち、ボク以外とセックスをする。ボクがそうやってHAYATOとしての地位を築き上げてきたのと同じように。

「――あははっ、うん、イけるよ? ボクは音也くんよりずうっと先輩だからにゃあ」

 ボクは一体なにを勘違いしていたんだろう。この子とボクは恋人なんて甘い関係じゃないんだ。この表情も、可愛く喘ぐ声も、いつかそう遠くないうちに他人が見ることになる、のに。

「ん、じゃあ、がんばる…」

 ボクの感情は置いてけぼりのまま、ぎゅうっと首に回されていた音也くんの腕にちからがこもる。再び閉じられた瞼を彩る睫毛は涙でしっとりと濡れていて、よく見れば眉尻は不安そうに下がってしまってた。ソレを認めた瞬間に、ボクは心臓がきゅうっと苦しくなる。

「音也くん、怖がらないで大丈夫だよ。力抜いてて、全部ボクに任せて、気持ちいいって思ったら我慢せずに声出して、…ね?」
「う、ん。HAYATO、……ありがと」

 ねぇ、こんな表情をされると困るよ、音也くん。目を瞑って、あかく色づいたくちびるをきゅっと結んで、熱に浮かされてとけてしまいそうな顔で、ボクの名前を呼ぶなんて反則。
 ボクは今すごく自然に、キミのことをいとしいって思ってしまった。他の誰にも渡したくない、って。

「……音也くん、可愛い」

 ボクはまるで、コイビトにするように大事に大事に、腰を揺らすたびに彼の表情を確認しながら、ぜったいに痛くないように苦しくないように、まだまだ快感に不慣れな彼のからだをゆっくりと追い詰めていった。






改定履歴*
20120519 新規作成
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