キミが教えてくれたこと -1-
デビューしたての新人アイドルが、先輩とか権力を持つ人に夜のゴホーシをして、お仕事をもらう。
一般の社会で生活してるひとには、今時何言ってるのよくあるただの噂話でしょ、って笑い飛ばされちゃうかもしれない。そんなの実際にあるわけないよってね。
けどね、実際この業界じゃよくあることなんだよ。ボクだって散々やってきたし、トップアイドルとしてそれなりの地位を得てからはされる方だって経験ある。
普通だったら、こういうことはお互い好きで、その気持ちを伝え合うためにするんだろうなっていうのはわかってる。けどそんなことを思ったのは、それこそ初めの数回だけだった。だってボクは歌をうたいたかったし、そのためにはこうするしかなかったんだ。
それにこんな生活を何年か続けてるとね、次第に好きとか愛とか、そういう感情がわかんなくなってくるんだよ。だって仕方ないでしょ、どんなに綺麗なコだって、服を脱いでしまえば中身はおんなじ。ボクに取り入ってお仕事をやりやすくしよう、あわよくばボクを押しのけて売れっ子になろうっていうことしか考えてない、ボク自身のことなんて全然目にはいっていないんだ。これで誰かに恋をしろっていう方が無理なんだよ。
そんな新人さんと、ただ気持ちよくなれればいーやってボク。ただセックスするだけっていうこれ以上ないくらいに割り切った関係だけど、最近、これはこれで便利だなって思うようになってきた。
それに、あの広いばかりの無機質なマンションで、ひとりで寝るのは何年経っても慣れないから。ボクは今日も、手近な子と一緒にベッドに入るのを止められない。
改定履歴*
20120519 新規作成
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