わんこの餌付け -2-
「音也くんってば、せっかく会えたのに、あんまりほっとくと拗ねちゃうよ? ボク以外のこと考えてるなら尚更」
「ごめんごめん、なんでもないよー? ただ、HAYATOにこーやってぎゅうってされるの気持ちいいなって思ってた。HAYATOの肌、すべすべですごいすき」
さっきよりも幾分拗ねたような声でぎゅうっと抱きしめたままの俺の額にキスを落とすHAYATOに本心からの言葉で甘えて、ちゅうっと彼の首筋にお返しのキスをする。
HAYATOと肌を重ねるのは、すき。彼が俺を呼ぶときの声も、俺よりずっと低めな体温の手がキスしてるうちにどんどんあったかくなってく素直さも、何度イっても萎えない、いわゆる絶倫なとこも全部。だからついつい、こーやって会いにきちゃうんだよね。
「もう、誰にでも言ってるんじゃないの?」
「そんなことないよ! HAYATOにだけ」
「そうかにゃあ?」
「あっひどい、信じてくれないの?」
「ここにこんなしるしつけてる子の言うことだからねー」
「え? ……っあ!」
寝転んでいたHAYATOがその半身を起こし、女のコみたいに整えられた指先で示したのは、俺の内腿。そこにはたしかに、暗がりでもわかる赤い跡がついてた。犯人には心あたりがある。寂しがりの俺をあっためてくれるもうひとつの腕の持ち主、トキヤだ。そういえば昨日セックスした時、ちょっとしつこいくらいフェラされたっけ。あのときにつけられたのかな?
「まったくトキヤもお子様だにゃあ。音也くんはふたりのものなのに、こんな風に跡つけて。こうしたらボクが触らないとでも思ったのかな」
「あはは、そうかも。でももしかして、HAYATOはオトナだからキスマークくらい平気?」
「まさか」
普段の言動を見てると、HAYATOが兄でトキヤが弟っていうのは、逆なんじゃないかなって思うことが多い。冷たいくらいにクールでしっかり者のトキヤが兄で、にゃあにゃあ可愛い口調の甘え上手なHAYATOが弟。多分、誰が見たってそう思うんだろうな。
けど、素のふたりは違う。HAYATOは寂しがりで奔放な俺を丸ごと受け止めてくれる包容力みたいなんがあってやっぱりお兄ちゃんなんだなって感じ。トキヤはああみえて二人きりになるとべたべたにくっつきたがるし、俺のことを独占したがる可愛い弟だ。もしかしたら、もともと俺はトキヤに抱かれてたっていうのが関係してるのかもしれないけど。お気に入りのオモチャをお兄ちゃんにとられた気分なのかな?
双子でもまったく性格の違う二人のことを俺はどっちも好きで、どっちかひとりなんて選べないよ。だからこうやって、日替わりで愛されてる。トキヤもHAYATOもそれを解ってくれてるし、俺にどっちかにしろなんて無理な命令はしない。トップアイドルとその双子の弟、こんなに特別な二人を俺が独り占めだなんて我ながら狡いなぁって思うけど、今はそれでいいかなって思ってた。
「ボクだってそれなりに嫉妬してるよ」
「ええ、HAYATOが? 本当に?」
「うん。できるなら音也くんに首輪つけて鎖でつないじゃいたいくらいだにゃあ」
思ってた、んだけど……。HAYATOの本音を聞いて正直びっくりした。独占欲丸出しのトキヤはともかく、HAYATOは俺とトキヤと3人の関係をそれなりに楽しんでるんだとばかり思ってたから。
ころん、と寝転がってた俺のことを抱き起こして、正面から向かい合う。セックスの時は指先まで熱くなるHAYATOの手が喉元に触れて、ひんやりつめたい。
改定履歴*
20120412 新規作成
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