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わんこの餌付け -1-

 最後にひとりで眠ったのは、もうどれくらい前になるだろう。

 俺を一人で産んで育ててくれた大好きな母さんはちいさい時に出掛けたきり帰ってこなくて、施設で育った。この生い立ちを聞くと、大変だったでしょうとか寂しかったでしょうとか気遣ってくれる人もいる(っていうか大多数がそうだ)けど、俺自身はあんまり、そこまで寂しいって思ったことないよ。
 施設ではたくさんの友達に囲まれて仲良く過ごせたし、今だってすっげー倍率の入学試験を運良く潜り抜けて、早乙女学園で楽しく寮生活を送ってる。

 ただ、何年経っても一人で眠るのは苦手なままだ。
 だから『アイドル候補生』になれるくらいの姿かたちをくれた母さんには本当に感謝してもしきれない。だってそのおかげで、こうやって毎晩俺を抱きしめてくれる誰かの腕があるんだから。だれかにぎゅうっと抱きしめてもらってぐっすり眠りに就ける俺は、全然寂しい子なんかじゃないよ。



****

「音也くん、なに考えてるの?」
「HAYATO」

 今晩俺を抱きしめてくれているのは、HAYATO。『おはやっほ〜ニュース』で毎朝全国のファンに笑顔を振り向いている、トップアイドルの『HAYATO』その人だ。
 普通だったら俺なんてHAYATOの視界にすら入らないんだろうな。けど、全寮制の早乙女学園で俺がルームメイトになったのは、HAYATOの双子の弟のトキヤだった。トキヤと仲良くなって、学園の授業で一緒にテレビ番組の収録を見に行った先にHAYATOがいて。それからはもう早かったよ、俺もHAYATOも基本的に人恋しいっていう部分が似てるのかな、二度目に会ったときにはもう、そういう関係になっちゃってた。

 双子だからおんなじ顔立ちをしてるトキヤももちろんかっこいいけど、HAYATOは特別。きらっきらの、なんていうの?アイドルオーラってやつ?例え話でよく使うようなそのオーラが実在してHAYATOを取り巻いてるみたいで、初めてテレビ越しじゃない生の笑顔を見た時は俺ドキドキしすぎてしんじゃうかと思った。
 今だって、HAYATOは王子様みたいな衣装を脱いで裸なのに、それでもやっぱりかっこいい。アイドル『候補生』の俺と違ってほんもののトップアイドルなHAYATOはすごく忙しいはずなのに、髪も爪もちゃんと手入れされててツヤツヤしてて……そんな相手と俺が男同士でこうやってるなんて、不思議だよね。ほんと人生って何が起こるかわかんない。






改定履歴*
20120412 新規作成
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