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個人授業 -1-

「では、おやすみなさいませ」

晩餐を済ませ、風呂に入って、バスローブから夜着に着替えさせられて、おやすみなさいの挨拶をする。
ここまでは、セバスチャンが僕の執事になってから欠かすことなく続けてきた日課だ。
この日課の最後に、もうひとつ項目が増えたのは、10日程前のこと。

「…セバスチャン」
「はい。…お隣にお邪魔してもよろしいですか?」
「ん」

ふぅっと燭台の灯りを消して燕尾服とベストを脱ぎ、
掛布を捲って僕の隣に入ってくる体温に、自然と顔が笑顔になる。
いつのまにか、この瞬間が一日のうちでいちばんすきな時間になっていた。
昼間は主人と執事として接している恋人に堂々と甘えてもいい時間だから。

座ったままゆっくり僕の髪を撫でるセバスチャンと同じように自分もベッドに座り、
もう一度名を呼んで手を伸ばせば、ぎゅっと抱き締められてキスしてくれる。
一度目は、ちゅっと軽く啄むようなもの。
そして二度目は、あたまがくらくらするくらいに深いもの。

「ふ…ぁ、セバスチャン…」
「好きですよ」

そのまま優しくベッドに押し倒されて、髪や頬を撫でられて甘やかされて。
一番すきな人に、『好き』と言ってもらえる、何よりも愛しい、大切な時間。

「ひぁ、…んっ!」
「擽ったいですか?」

体中にキスを落とされる感覚は、初めてのときよりは少しはマシとはいえ、まだまだ慣れない。
セバスチャンの唇が体に触れる度にびくびく反応する体と、
自分の意思とは無関係に上がる嬌声が、余計に羞恥心を煽った。

「ぁん、あ、ちが、…あ!」
「坊ちゃん、うまくお喋りできていませんよ」

恋人の問いかけに必死で答えようと思ってもままならず、
その上性器を緩く握られてくすくす笑いながら耳の傍でそんなことを囁かれて腰が揺れた。
当然ながら、まともに返答なんかできるはずもない。

「――っあ!あっ、や、ぅあ…っ!」

経験の浅い僕は、セバスチャンに好きなように可愛がられて簡単にイってしまう。
毎晩のように抱かれて正直体は辛かったが、それでも、愛されて得る嬉しさの方が何倍も大きかった。

昨日もそうやって抱かれて、きっと今日も、明日も明後日も。
ずっとずっと、こんな甘い夜が続くんだと信じてた。






改定履歴*
20110204 新規作成
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