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個人授業 -12-

「坊ちゃん、朝ですよ」
「ん…」
「まだおねむですか?」
「…だれのせいだ」
「はい、申し訳ありません」

くすくすと上機嫌で笑いながらあたたかな湯に浸したタオルを絞って夜着を脱がせ、
ちいさなご主人様のからだを拭くセバスチャンの表情は、これ以上ないくらいに嬉しそうなもの。
対してシエルは、なんとか目を覚ましはしたものの体を起こすのすらつらそうにして、
大人しく背を執事に預けてされるがままになっていた。
行為が終わってからもいちどタオルで清められたような記憶があるのに、随分と過保護な執事だな。
そう思ってみても、やはり大事に扱われるのは嬉しい。
きっとバスではなくタオルで拭くだけにとどめているのも、寝起きの自分を気遣ってのことなのだろう。

「さぁ、綺麗になりましたよ。お着替えしましょうね、坊ちゃん」
「…やたらと過保護すぎて、なんだか居心地が悪いんだが」
「それは申し訳ありません。なにしろ大事な恋人ですから」
「…う、朝からそういうのはヤメロ」

そういいながら恥ずかしそうに俯くシエルの細い項、真っ白なそこに誘われるように
セバスチャンはそっとキスを落とし、ちゅうっと音をたてて所有の証を残す。
途端にぴくんと震えるからだに思わず欲が煽られるが、そこはさすがにぐっと我慢をした。

いつもどおりにシャツを羽織らせボタンを締め、ハーフパンツとジャケットを着せて、
ほっそりした脚に靴下をはかせ仕上げにリボンを。
まだ半分夢の中にいるような主人を慣れた様子で着替えさせると、頭を撫でて頬にキスをひとつ。
擽ったそうに首を竦めながらも嬉しそうなシエルの様子に、セバスチャンの顔にも笑顔が浮かんだ。

「坊ちゃん、朝食はどうなさいますか?」
「朝食より、まだ寝ていたい」
「はい、そういわれるかと思ってサンドウィッチをご用意いたしました。
 おなかがすいたら馬車の中で食べましょうね」
「うん」
「街屋敷に着いたら、バスの準備をいたしましょう。きっとすっきり目覚めますよ」
「…うん」

まだまだ睡眠を欲しているらしい主人のからだをひょいと抱えて階段を下り、
用意させた2頭立ての馬車のふかふかのソファにその体を寝かせようとしてシエルの顔が目に入った。
その間シエルは何も言わず大人しく抱かれたままだったから、寝ているのかと思ったら
そのふたつの大きな瞳はじっと自分を見つめていて…言葉は何もなかったが、なにか言いたげな視線に
セバスチャンは何か忘れ物でもあるのだろうかと尋ねてみる。

「坊ちゃん?どうなさいました?」
「いや、別に…」
「忘れ物でしたら、取りに戻りますよ」
「そんなんじゃない、…なんでおまえは僕の考えていることがわかるのかと不思議に思っただけだ」
「え」
「…きのうだって、寂しくてどうしようもないときには傍に来てくれた。
 僕のして欲しいことがわかるのも、悪魔のちからか?」
「――いいえ、それは…」

思いがけず投げかけられた、かわいい質問。
一瞬目を丸くしたセバスチャンだったが、次の瞬間には口元に緩く弧をかいて微笑んでみせる。
そうして、そのままそっと耳元で言葉を紡ぐのだ。大事な恋人に、ひとつひとつ、丁寧に教えるように。


「愛のちからですよ、坊ちゃん」


それを聞いたシエルが一瞬で顔を赤く染め、次の瞬間照れ隠しついでにぺちぺちと叩いてくるのを
甘んじて受けながら馬車に乗り込み、寝かせた主人へ膝枕をするのだった。

「坊ちゃんにはまだまだお教えしなければならないことがたくさんありますね」
「あまり深いのはいらないぞ?」
「……イエス、マイロード」
「その間は何だ」
「どの辺までならいいのかなと思いまして」
「…それは…先生に任せる」
「イエス、マイロード」




end

改定履歴*
20110227 新規作成
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