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家庭教師のHAYATO先生 -2-

 でも、冷静に考えたら、やっぱりそんなのはダメだよねって思う。
 こんなに純粋で真っ直ぐな男の子は、新しい友達に囲まれて楽しい高校生活を送って、その中でちゃんとした順序の恋愛を知るべきなんだ。

 例えば――そう、入学式で見かけた可愛い女の子が同じクラスで、毎日休み時間や移動教室の度にちょっとずつ会話を交わすようになって、ふとしたことで手が触れてドキドキして……そういう、模範的に甘酸っぱい初恋っていうものを。
 彼の隣にいるのは、同じ目線で同じ物を見て一緒に物事を考えて、一緒に成長していける女の子の方がいいに決まっている。目の前の4つも年下の男の子をどうにかしたい、なんて考えるようなダメなボクじゃなくってね。

「先生」
「…あ」
「はい、全部終わったよ?」
「わぁすごいすごい!音也くんはえらいにゃあ! …じゃなくって、ごめん、先生なんだか今日ぼーっとしすぎだね、ごめんにゃあ」
「うん、せんせ、なんか最近変だよ。どうかした…? 風邪? 大丈夫?」

 だから、音也くんに想いを伝えることは勿論、これ以上の感情をもつことはだめ。抑えきれなくなってしまうから。だからだめなんだよ、ダメ、なんだとは思うけど…。

「先生、大学忙しいんでしょ? なのに俺につきあってくれてありがと」
「ううんううん、音也くんの方がずっと忙しいでしょ。なのに先生がぼーっとしてちゃだめだね、ごめんね」

 だめだよ音也くん。こんなふたりっきりの密室で、音也くんの大好きなミルクとはちみつたっぷりのカフェオレよりもあまい声と、世界中のどこを探しても見つからないくらいにきらきらした宝石みたいな瞳で、必死に飢えと戦ってる狼を見上げたりしちゃ。
 必死に頑張っているなけなしの理性が、どこかにいってしまいそう。

「無理しないで、つらかったら言ってね? あ、俺のベッドで寝る? ちょっと寝たらよくなるかも」
「〜〜っもう、音也くんはカワイイにゃあ」
「え、わぁっ」

 ほらね、さっきまでの葛藤はどこへやら、自分の気持ちに正直なボクの両手はキミのからだをすっぽり抱きしめてしまって、もう離してあげられないよ。彼に想いを伝えちゃダメ、ってあんなに自分に言い聞かせたのに、ほんとに先生失格かも。せめて、はじめに決めたとおり受験が終わるまで待たなきゃ―ーでも、とても止められそうにない。

「せんせ、気分わるかったんじゃないの…?」
「んー…ううん。平気。可愛い音也くんをぎゅってしてたらすぐになおるよ」
「可愛いなんて…だって、俺男だよ? 先生からかってる?」
「そんなことない、ボクは音也くんのこと大好きだよっ」

 15歳の音也くんのからだは、19歳のボクと違ってまだまだ成長途中でうすっぺらい。
 とはいえ、サッカー部で運動大好きというだけあってしっかり筋肉はついているし、身長もそう変わらないから、きっとあと数年も経てばボクなんかあっという間に追い越してオトナの男になってしまうかな?
 けれど今は、ボクの方が身長もちからも上。かわいそうに、狼に見初められてしまったカワイイ仔兎は、ボクの腕の中でされるがままだ。
 勉強に集中するためにテレビも音楽プレイヤーもつけていないこの部屋はあまりに静かで、彼のとくとくっていうちっちゃな鼓動の音すらも聴こえてきてしまいそう。
 このままちゅーしてしまおうかなぁ。どうしよう。さすがにびっくりさせてしまうかな?

「…ハヤト先生」
「はい、音也くん」
「あのね、先生の言うだいすき、ってね」
「うん?」
「どういう”好き”なの…?」

 …あぁ、そんな目で見ないで、音也くん。

「…知りたい?」
「――うん」
「こういう、”好き”だよ」

 ほら、キスしちゃった。
 初めて触れた音也くんのくちびるは、ふわふわぷるぷるで、思ってたよりずっとやわらかい。一度だけにしようと思ったのに、視線が合っちゃったから我慢できなくって。まぁるい後頭部をそおっと引き寄せて、二度、三度って回数を重ねる。
 舌、入れちゃおうかなぁ。だめかな。嫌がられる?そんなことを考えながら、ぷっくりしてる下唇をやわらかく食んでみる。途端にびくんって跳ねたからだに、さすがにちょっと早かったかと反省して、名残惜しかったけど無理やりキスを終わらせた。

「――…、せんせいに、キス、されちゃった」
「うん、しちゃった」
「はじめてだよ」
「嫌だった?」
「…先生は?」
「先生はうれしかったにゃあ」

 どうしよ、怒らせちゃったかな?って思ったけど、どうやらそれはボクの杞憂だったみたいだ。
 音也くんは、嫌がるような素振りを見せることもなく顔を真っ赤にしてボクの腕の中でおとなしく抱きしめられてくれてる。いつもはシャープペンシルを握っているてのひらはいつのまにかボクの服をきゅっと握ってて、それが堪らなくいとおしく思えた。

「音也くんのファーストキスもらっちゃったぁ」
「っちょ、恥ずかしいよ!」

 緊張からか、固まっちゃってる音也くんをからかうように声を掛けてみると、ぺちぺちとボクの胸をたたいてきた。あぁ、どうしようすごく可愛い。
 すぐ傍にある熱い頬へ思わずキスをしてしまうと、音也くんはまた途端に大人しくなってしまった。しばらくそのまま、されるがままだった彼がそおっとボクを見上げる。その顔はまっかで、緊張しているのか目にはほんのり涙がたまってて、それを見た瞬間ボクはきゅううっと心臓を鷲掴みにされた気分になった。

「ねぇせんせい」
「はい、音也くん」
「責任とってください。俺、先生のこと大好きになっちゃった」

 はずかしそうに、でもボクの瞳をまっすぐにとらえた音也くんの言葉に、ほんと息が止まってしまうかと思った。夢でも見てるのかな?って思わずそんなお決まりのセリフが頭をよぎる。でも、夢なんかじゃない。だってボクの腕の中には、自分の言った言葉で余計に緊張して涙を滲ませている可愛い音也くんがいるんだから。

「うん、ボクが責任もって音也くんのことしあわせにしてあげる」
「しあわせって? いっぱいキスしてくれる?」
「音也くんはキスがすきなの?」
「…う、うん…。きもちよかったし、ドキドキしたよ」
「そっかぁ。素直でいいこだねっ? 音也くんがいいなら、いっぱいいーっぱいしてあげる。でも、キスだけでいいの?」
「だけって? 他に何があるの?」
「え、…ふふっそうだね、ごめんごめん、ボクがちゃんと責任持って全部おしえてあげるにゃあ」
「…? うん、約束だよっ?ハヤト先生!」

 そう言って、小指を出してくる、可愛いかわいい恋人。キス以上のことを何にもしらないまっさらな彼のことが愛しくて、その小指に自分の小指を絡めて頬にちゅっとキスをした。彼は擽ったそうに受け入れてくれて、あぁ、しあわせだにゃあ、と実感する。

 とりあえずは、想いが通じただけで十分。受験までは一生懸命に勉強を教えて、無事高校に合格したら――勉強以外のこともいちからおしえてあげるねっ、音也くん。





end

改定履歴*
20120225 新規作成

たしか年末頃にした『HAYATO様が先生だったらもうほんと色々がんばれますよね…』っていう会話の産物です/実はパロ書くのがほんと苦手で、す、なんとかできあがってよかった!/『どういうすきなの?』はこれ書いてるときにあの曲のトキヤと音也くんの動画を延々リピートしていたのでつい/妄想がまとまったらえろパートもかきたい/ベタですが「100点のご褒美はなにがいい?」「…じゃあ俺っ、ハヤト先生の部屋に行きたい!」「ボクの部屋?」「ん、せんせいの部屋で勉強したらきっと捗ると思うんだ。…だめかな?(わんこオーラ)」「音也くん…(トゥンク)」から始まるハヤト先生の性教育とか
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