top * 1st * karneval * 刀剣 * utapri * BlackButler * OP * memo * Records

しあわせティータイム -バレンタイン編-

「よし…!できました。完璧です」
「なんだこりゃ?」
「バルド、これは日本伝統のおやつですよ」
「セバスチャンさーん、ぼくたちの分は?」
「皆さんはそれぞれ作りながら召し上がってください。
 仕事も放り出してずっと見ていたのだから、やり方はわかるでしょう?」
「はいっ!よしっがんばるぞー!たのしみ!」
「メイリン、タナカさんには貴女が作ってさしあげてくださいね?」
「はいですだ!」
「では私は坊ちゃんのお部屋にお持ちいたしますから…
 皆さんはゆっくりと休憩をおとりくださいね。くれぐれも、ゆっくりと。
 あ…晩餐の準備は済んでいますので、気になさらなくても結構ですよ」
「「「はぁーい」」」



さぁ、今日も準備万端、完璧です。節分の日が思い出されますね。
あの日は今思い出しても本当に素晴らしい日でした。
坊ちゃんのちいさなお口いっぱいに私の(作った)モノが入り込んで…
それはそれは、美味しい光景でした。ごちそうさまでした。

今日はバレンタインデーです。坊ちゃんとのお約束どおり、
腕によりをかけてたくさんのスイーツを作らせていただきましたよ。
ファントムハイヴ家執事の名にかけて、必ずや坊ちゃんを満足させてみせます!!



「失礼いたします」
「入れ」
「坊ちゃん、アフタヌーンティーのお時間ですよ」
「ん…今日のおやつは何だ?」
「少々お待ちくださいね。すぐにご用意いたします」

紅茶の香りに混じって漂う、カカオとミルクの甘い香りに気付かれたのでしょう。
坊ちゃんはお仕事の疲れを解すようにぐっと伸びをした後、
執務机越しに興味深そうにワゴンをじっと見つめていらっしゃいます。
ああもうその仕草、可愛らしいですね。
まだ始まってもいないのに既に私のテンションは上がりっぱなしです。

「今日はバレンタインデーですので、お約束どおり
 たくさんのチョコレートを使ったスイーツをお持ちしましたよ」
「すごいなセバスチャン!」
「喜んでいただけて光栄です。さぁどうぞ。まずはコレを」
「?なんだ、これは」
「これは『チョコバナナ』というものですよ」
「チョコバナナ…?」
「はい。日本に古来より伝わる、祭りの時には欠かせないおやつなのだとか。
 これを売る出店は行列ができる程大人気で、皆こぞって食べるようですよ」
「へぇ…そういえばバレンタインにチョコを贈る風習も日本のものだったな。
 日本人は今日は皆コレを食べているのか」
「ええ、もちろん」

もちろん、嘘です。いえ半分くらいは本当なのですが。
祭りにチョコバナナはあっても、バレンタインにチョコバナナなど聞いたことありません。
が、いいのです。坊ちゃんを納得させられればいいのですよ!

「ふぅん…『恵方巻き』もおいしかったしな。よし、これから食べる」

イエス計画通り!!さすが私の坊ちゃん。
こんなにうまく事が運ぶとは思っていませんでした。
これは普段こき使われ虐げられながらも文句のひとつも言わず
健気に職務を全うしつづけている私へのご褒美ですね間違いありません!

「おい何をぼさっとしてる」
「あ、はい、え?」
「こんなに大きいの明らかに一人じゃ無理だ。手伝え」
「そうですよね大きいですよね失礼しました。私がお持ちしましょう」

私はうきうきと大きな椅子に座ったままの坊ちゃんの横に立ち、
チョコバナナを両手でお持ちいたしました。
これだとちょうど私の腰あたりに持つことになり少々良心が痛むのですが、
坊ちゃんのお顔の高さを考慮するとどうしてもこの辺になるのですから仕方ないですよね。
そんな、まさに口淫に見せかけようなんて他意はございませんよ、決して。

そして、バナナを溶かしたチョコでコーティングするだけとは言え、
私の辞書に妥協という文字は存在しません。
このために劉様にお願いして、馬車3台分の最高級バナナを購入しました。
その中から厳選に厳選を重ね、やっと私のモノに見合うサイズのものを発見したのです!
…まぁ、太さは正直足りませんが。所詮は果物、私にかなうわけがないということでしょう。
――ですがその代わり、長さと反りは完璧ですよ、坊ちゃん。

「…おまえこの間もおかしかったが今日もおかしいぞ。また風邪か」
「えっあっ、はい?」
「途中から口に出てたぞ」
「!!!!!!!!!!」
「冗談だ、馬鹿が」

一体何を考えていたんだ?などとくすくす笑いながら仰る坊ちゃんの笑顔、最高です…。
まったく何時の間に成長なされたのでしょう。もう立派に私を惑わす小悪魔です。
大きなチョコバナナを持った私の手に坊ちゃんの手が添えられて、
手袋越しに伝わる体温に否が応でも期待が高まります。

「…あまいにおいがする」

そういいながら、チョコバナナに鼻を近づけてくんくんする姿、
坊ちゃん、そういう仕草は反則です…。
思わず鼻先やほっぺたに擦りつけてあげたくなっちゃうじゃないですか。
ですがぐっと我慢するしかありません。
坊ちゃんのおくちに私の(作った)モノが収められる、その時まで!

「…そう見つめられてはチョコも溶けてしまいますよ、坊ちゃん」
「ん、そうだな。…そうか?まぁいい。いただきます」

嗚呼、ぱくん、と音がしそうなくらいに可愛く頬張る坊ちゃんのお姿、
できることならばナイスアングルで写真に収めておきたかったです…。
そうすれば私、しばらくというか永遠にオカズに困らない気がします。
代わりに目に焼き付けておくしかないですね、瞬き厳禁ですね!

「ン、ん、…ぁ、セバスチャン…っ」
「――はい、坊ちゃん…」
「これ、おっきくて、かたくて、むり」
「ああ、(チョコが)堅かったですか?申し訳ありません、マイロード」
「んっ、ん」
「さぁ坊ちゃん、周りにそって、舌を這わせて…お上手ですよ」
「ん、ぁ…も、ぐちゃぐちゃ、むりだって」

そうですよねぐちゃぐちゃですよねっ!
私がぐちゃぐちゃのそこに突き立てて差し上げます!

「ん!もうこれいらない!次のおやつをだせ」
「ぐちゃぐちゃ違いでした」
「なんのことだ」
「口に出ていましたか」
「はっきりとな」

私ともあろうことが、あまりのテンションのあがりっぷりに
思わず失態を犯してしまったようです。
ああもう、ごちそうさまでした。

…本音を言うと、喉の奥の奥までバナナを突っ込んで
閉じることのできないお口の端からつぅっと涎を垂らし、
苦しそうに潤んだ瞳で私を見る坊ちゃんを見てみたかったのですが、
それをやると本気で解雇されそうですので今日はこれで満足しようと思います。

「セバスチャン!次のおやつはまだか」
「イエスマイロード。どちらにいたしましょう?」
「全部だ」
「イエスマイロード!」
「今日は随分寛大だな」
「お約束のバレンタインデーですからね。目的も綺麗に果たしましたしね。
 あとは晩餐まで何も予定は入れておりませんので、ゆっくり過ごしましょうね」
「………」
「坊ちゃん?」

チョコケーキの皿を持った坊ちゃんに手を引いて連れて行かれたのは、大きなソファの前。
坊ちゃんはそこに私を座らせると、あろうことか膝の上にぽすんと座られたのです。
そうして、事態が飲み込めずにいる私をひょいと振り返ると、
とびきりの笑顔でこう仰られたのでした。

「『あーん』」
「!?!?」
「ほら早く口を開けろ」

促されるまま口をあけると、そこに入ってくるのはひとかけらのチョコレートケーキ。
惰性でそれを飲み込めば、坊ちゃんは嬉しそうにふにゃりと笑われました。

「『親愛の情を込めて』チョコをくれたんだろう?だからお返しだ」
「坊ちゃん…」
「おまえは変態だけど大事な執事だからな!」
「坊ちゃんひとこと多いです嬉しいです…」
「で?やっぱりまずいのか?悪魔の味覚は人間と違うのだろう。まずいか?」

ああそういうことですね。私を困らせたはずだという笑顔が輝いています。
いたずらっ子な坊ちゃんも愛していますよ。

ちなみにチョコレートケーキはとびきり美味しく感じました。愛の力です。
いつか私のバナナもあむあむしてくださる日がくるのを心待ちにしながら、
我侭でいたずらっ子なご主人様に仕えようと心に決めたのでした。






改定履歴*
20110216 新規作成
最後の最後に自重できてない執事さんですみません。お付き合いありがとうございました。
- 2/2 -
[] | [次]



←main
←INDEX

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -