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しあわせランチタイム -節分編-

「よし…!できました。完璧です」
「今日はまた見慣れねぇモン作ったな」
「バルド、これはれっきとした日本食ですよ」
「セバスチャンさーん、この残り食べていいんですかぁ」
「はい、皆さんで召し上がっていてください」
「うわーいありがとうございますっ!おいしそー!」
「メイリン、日本茶をここに置いておきますから、タナカさんに淹れてさしあげてくださいね」
「はいですだ!」
「では私は坊ちゃんのお部屋にお持ちいたしますから…
皆さんはゆっくりと休憩をおとりくださいね。くれぐれも、ゆっくりと。」
「「「はぁーい」」」



放っておくといろいろな問題を引き起こす使用人たちにはゆっくりと休憩を取るように
指示をして懐中時計に目をやれば、ちょうどランチタイムの5分前を指していました。

「さて、坊ちゃんがお待ちですね」

お手製のランチを手に坊ちゃんの執務室へ向かいます。
本来なら、食事を作るのはシェフの仕事なのですが…
うちのは名ばかりのシェフで任せておけませんので、私がご用意します。
え?ちゃんとした料理人を雇わないのかですって?
その必要はありません全くもってありません他人が作った食物を
坊ちゃんのあの可愛らしいお口にいれさせてたまるものですか!!!…いえ、
坊ちゃんはまだまだ成長途中、栄養管理も大切なお仕事ですからね。
私が誠心誠意、勤めさせていただきます。



「失礼いたします」
「入れ」
「坊ちゃん、ランチをお持ちいたしました」
「ん…今日はなんだか屋敷が静かで仕事がはかどったな」
「それはようございました」

当たり前です。むしろそうでいてくれないと困ります。
今日は坊ちゃんの仕事が捗るように、朝からあの使用人達をずっと監督しておりましたから。
それもこれも全てはこのランチタイムの為!!目的、遂げさせていただきます。

「今日は日本茶なのか?めずしいな」
「はい、劉様にお願いして最高級のものを取り寄せました」
「…?これは?」
「これは、今日のランチですよ。『恵方巻き』というものです」
「えほうまき…?」
「はい、今日は2月3日、日本では『節分』という厄払いのような行事が行われます。
その際に縁起を担いで食べるのだとか。縁起ものですよ」
「ふぅん。ナイフとフォークは?」
「そんなもの必要ありません」

あまりにめずらしい形をした食べ物を前に首を傾げる坊ちゃんに、
怪しまれないようにっこり笑って、この料理がどのくらい縁起のいいものかを説きます。
本当はこの10倍くらい節分と恵方巻きについて語らせていただいたのですが、
文章にすると本当だらけるので省略させていただきます。
もちろん知識は先日書斎で仕入れてきた付け焼き刃ですが、
坊ちゃんを納得させられればいいのですよ何の問題もありません。

「……ですから、恵方巻きというものはー…」
「わ、わかったわかったもういい!
とにかく、目を瞑って願い事をしながらこれを一気に食べればいいんだな?」
「さすが坊ちゃん、理解力に優れていらっしゃる」
「からかうな。…よし、いただきます」

イエス計画通り!!本当に、さすが私の坊ちゃんです。私の予想通りに動いてくださいます。
というか『いただきます』って。可愛すぎます。ねらってるんですかね。

「うわ…セバスチャン、崩れそうで一人じゃ無理。手伝え」
「イエス、マイロード。私がお持ちしましょう」

執務室のふかふかの椅子に掛けたままの坊ちゃんの隣に立ち、手袋を外して
恵方巻きを両手で持って差し上げます。計画通り。

「随分、大きいんだな」
「ええ、サイズも忠実に再現いたしましたから」

さすがに反りまでは無理でしたが。太さも長さも私そのものですよ、坊ちゃん。

「縁起物とはいえ、日本人とはこんなにおおきなものを食べるんだな」
「いいえ、坊ちゃん。このサイズは私以外にはそうそういないと思いますよ」
「お前、さっき忠実に再現したって言ったじゃないか」
「そうでした」
「…?いつもに輪をかけて変だぞ、お前」
「も、申し訳ございません…正直今色々と余裕がございませんので」
「???いいや、僕はおなかがすいた。動くな」

恵方巻きを持つ私の手に、坊ちゃんの小さな手が添えられます。
伏した目には長い睫毛が影を作って、
赤い舌が覗くちいさなお口があーんと開けられて、
それがどんどん近づいてきて…もう一息、というところで。

「そういえば願い事を決めていなかった」
「えっ、ええ、坊ちゃん、もう何でもいいと思いますよ」
「随分投げやりだな。執事のくせに僕に興味がないのか」
「そんなこと!!!!!!むしろありすぎて色々大変です」
「…まぁいい、うーん、願い事…」

嗚呼坊ちゃん。貴方は本当に私を焦らすのがお上手だ。
添えられたままの手が暖かくて、恵方巻きの傍でそんなに考え事をされて。
私何も食べていませんがおなかいっぱいです。
むしろ今夜のオカズにもなりそうです。ごちそうさまです。

「そうだ、決めた」
「え…、――っ!!」

ぱくん、と坊ちゃんのちいさなお口のなかに、私の(作った)モノが咥え込まれました。
不意打ちですよこんなの。思わず声とかいろんなものが出そうになりました。
ご機嫌でもぐもぐと頬張る姿、可愛すぎます…。




「うまかった」
「私もです。ごちそうさまでした…。」
「お前食べてないだろう」
「そうでした」
「…本気でおかしいぞ、お前……手も熱いし、悪魔でも風邪ひくのか」

そう言いながら、私の手をにぎにぎされる坊ちゃん。
嬉しいです、嬉しいですが、私はもう限界です。いろんな意味で。
下半身に集まった熱が暴走しないように気を逸らさねば。

「そういえば坊ちゃん、何をお願いされたのですか?」
「…それは…」
「日本では、お願いごとは、人に言えば叶い易いそうですよ?
それとも、私には言えないようなことですか?」

もちろん、嘘です。嘘も方便といいますので、問題ありません。
だって坊ちゃんの可愛いお願いごと、叶えて差し上げたいじゃないですか!!

「…ぅ。ぼくの、願い事は」
「はい、教えてください」
「おまえの、…セバスチャンの作るスイーツが、たくさん食べられますように…って」













あぶなかった




押し倒すところでした…。



坊ちゃん可愛いです可愛いです可愛すぎます…
頬をほんのり赤くしてそんな可愛らしいことを言ってくださるなんて、
私が悪魔なら坊ちゃんは天使です。もしくは小悪魔。
私を惑わせるためだけに舞い降りた小悪魔ですね間違いありません!!!


「坊ちゃん、そのようなお願いでしたら、いつでも叶えて差し上げますよ」
「甘いものばかり食べたら食事を残すからダメだというのはどこのどいつだ」
「そうでした。…そうですね、近々バレンタインデーというものがあります」
「バレンタインデー?」
「日本ではその日に、親愛の情を込めてチョコレートを贈るそうですよ」
「日本は素晴らしい国だな!」
「全くです。私、腕によりを掛けておいしいスイーツをお作りさせていただきますね」
「約束だぞ、セバスチャン」
「勿論です。沢山食べていただくため、アフタヌーンティーの後の予定は空けておきましょうね」
「そこまでか?」
「勿論です」

勿論ですとも。ああ今日も、午後からの予定は開けておけばよかった。
そうすれば私は坊ちゃんをおいしくいただけたというのに…。
ですが私は有能な執事ですから、二度同じ失敗は致しません。2/14が楽しみです。






改定履歴*
20110203 新規作成
なんか色々ごめんなさい。
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