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ミルクとはちみつ -1-

『――ですが、この暖かさも今日までとなりそうです。明日は寒冷前線がぐっと南下し、関東地方ではこの冬一番の冷え込みとなるでしょう』

誰も見ていないテレビから流れるニュースキャスターの声が、マグカップ片手にソファで寛ぐ音也の耳に届く。こくん、と一口飲み込んだ甘いカフェオレは、今頃半身浴でリラックスしているであろうトキヤが淹れてくれたものだ。マグカップをテーブルに戻すついでに、今まで雑誌に向けていたその視線をテレビへと向けてみる。けれど、そこに映し出されているのは難解な天気図と特段可愛くもない男性の気象予報士だったから、彼はすぐさま視線を雑誌へ戻した。テレビの片隅に表示されている無機質なデジタル時計は、午後23時30分を表示していた。

「トキヤ、今日も遅かったな…」

独り言ついでに、ほう、とため息をひとつ。トキヤが帰ってきたのはほんの30分程前だ。彼は自分を待っていてくれた音也の頬へひとつただいまのキスをすると、手洗いうがいを済ませてそのままキッチンに向かいコーヒーとカフェオレを淹れた。そうして少しの時間だが音也と向かい合わせに座って何気ない会話を交わす。これは、ふたりが恋人になってからの習慣だ。

どんなに帰りが遅くなろうとも、トキヤは絶対にこの習慣を欠かすことはなく、そのことが、ふたりの時間を大切に思ってくれていることのようでうれしかった。そうして先に飲み終わったトキヤが「おやすみなさい」と挨拶をしてバスルームに向かう背中を笑顔で見送るまでが、音也の一日。その後は揃いのマグカップを洗って自分のベッドに潜り込み目を瞑る。トキヤの風呂上りを待っていたこともあったが、半身浴が好きなトキヤの入浴時間はそれなりに長く、また、カフェオレに入れられたたっぷりのミルクでおなかがいっぱいになってしまって、最近では先に寝てしまうことの方が多かった。

けれど今日はいつもと違って、音也はトキヤがバスルームに向かった後も温くなってしまったカフェオレ片手にソファーにいた。彼が手にしているのは、ずっと購入し続けているギターの音楽雑誌だ。最新号だというのにもう角は曲がり何箇所にも折り目が付いていて、スコア部分への書き込みは数え切れない程。こんなになる程読み込んだのは、ただ単純にギターが好きだからだけではない。






改定履歴*
20111120 新規作成
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