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4月♪はじめまして、どうぞよろしく

アイドルと作曲者を育成する専門学校<早乙女学園>。
全寮制のこの学校では、2人一組で同じ部屋で卒業までの一年間を過ごす。
誰と同室になるかは学園側(おそらく学園長なのだろうが)の意向ひとつで、
当然といえば当然だが、新入生にとっては実際に顔をあわせるまで
誰と同室で一年間を過ごすことになるか、分からないのだ。



****
一十木音也、15歳。
彼にとっては、同室のパートナーがトキヤだということは最高の出来事だった。

生まれ持った明るい性格と大好きなギターのセンス、それから、
ただただ歌が好きだという気持ちで音也は見事Aクラスに合格することができた。
けれど、トキヤは特に成績上位者だけが在籍を許されるというSクラス所属。
それだけでも羨望の対象だったのに、見た目も動作も、もちろん声も。
彼のすべてはすっきりと美しく無駄が無くて、一瞬で音也を魅了した。


「俺、音也。一十木音也。これから一年間、よろしくなっ」


――こんなやつと一年間ずっと一緒に生活できるなんて、俺って超ラッキー!

そんなことを思いながら、音也はにこにこと太陽のようにあたたかい笑顔で、
同室のパートナーに握手を求めたのだった。



****
一ノ瀬トキヤ、16歳。
彼にとって同室のパートナーが音也だという事実は、災難以外の何物でもなかった。

彼は自分を一目見たときに、トップアイドルであるHAYATOと
まったく同じ顔ということに驚いたようだったが、それも一瞬。
手短に双子の弟なのだと説明すると彼はあっさり納得し、
そのことにあまり触れて欲しくないということを敏感に察知したのか、
それ以上その件に触れなかった。

代わりに、『Sクラスなんてすごいよな』『いつから歌の勉強を始めたの?』
『好きな歌手は誰?』『じゃあ好きな作曲家は?』『憧れのアイドルは?』などなど、
ひたすらトキヤ自身についての質問をぶつけてきたのだ。
トップアイドルである兄ではなく自分自身についてこんなに興味を持たれることに
慣れていないトキヤは返答が必要以上に素っ気無くなってしまい、
それを申し訳ないと心の片隅では思ったが口にはできなかった。
けれど彼は気にする素振りなど全く見せずに、表情、声、仕草、その全てで
喜びを表現しながら接してくれたのだ。


「…一ノ瀬トキヤです。どうぞよろしく」


ほんの一瞬戸惑ったあとに握手をすれば、きゅっと握り返される。
音也の手はとてもあたたかく、彼の性格そのもののようだった。
明るい笑顔、素直さ、純粋さ。
自分はとうの昔に失ってしまったその全てがとても眩しくて、
同時にひどくトキヤのコンプレックスを刺激した。

――必要以上に近づかないようにしよう。彼とは同居人として最低限のコミュニケーションをとればいい。

心にちくりと刺さる棘を無視するかのように表向きの笑顔を浮かべながら、
トキヤはそう心に決めたのだった。







改定履歴*
20111019 新規作成
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