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6月♪気付かない振りをしていたのに -12-

「ねぇねぇトキヤー、おれのことすき?」
「内緒です」
「どうして?さっきまではあんなに言ってくれてたのに」
「それは…その…と とにかく、今はだめです!たくさん言ったでしょう?」
「もう1回聴きたいんだよー!ねっおねがいトキヤ、すきっていってみて」
「…ダメです」

手探りだったはじめてのセックスを終えてようやくふたりの息が整ってきた頃、
トキヤのベッドの上には乱れてしまった服をすべて脱いで
シーツに包まりじゃれあうふたりの姿があった。
いや、正確には腕枕をしてくれているトキヤにじゃれている音也の姿、と言ったほうがいいのかもしれない。

とにかく、トキヤと音也はいままでにないくらいに近い距離でしあわせな時間を過ごしていた。
好き、と言って欲しいとねだる音也の声は意図せずとてもあまい響きをしており、
トキヤは表情が緩むのをなんとか抑えようと精一杯だった。

普段からあまり感情を表に出さないタイプのトキヤにとって、
はじめて好きな人に想いを伝えて、受け入れられて、飽きるほど触れ合って。
この上ない幸福感に包まれている事がばれるのは、なんとなく、照れくさかったのだ。

そんなときに音也に『好き』だと伝えるなんて、それこそ顔が真っ赤になってしまう。
だからトキヤはいくらねだられようと、その二文字を口にすることができなかった。

「あ、もしかして、好きって言うの恥ずかしかったりする?」
「っ、内緒です!」
「もー!内緒とダメが多いよトキヤー!」
「それが私の性格だと、知っていたでしょう?」
「うー…」

必死で隠していた本心を言い当てられてすっかり慌ててしまったトキヤは、
いくら好きな相手とはいえこれ以上照れるところを見られては敵わないとばかりに
それまで適当にあしらっていた腕の中の仔犬の頬をむにっと摘んでみた。
もちろん、ちょっと黙っていてもらえませんかという思いを込めて。

「意地悪な男とこんな関係になって、後悔しているんですか?」

不満そうに頬をふくらませて黙ってしまう音也にそう問えば、
即答で「してないよ!」と返ってくる。焦った顔がなんだか本当に、かわいらしい。

トキヤは、そうですか、と言いながら腕枕をしていた音也の頭を抱き寄せて前髪にキスを落とした。
それを擽ったそうに受け入れる音也のしぐさもあたたかい体温も、すべてが愛しい。

「ちえ、1回くらい言ってくれてもいいのに。やっぱり意地悪だよ」
「何とでも」

ああよかった、やっと諦めてくれた、もう少し落ち着いたら
一緒にシャワーを浴びてさっぱりしようか、それともこのまま少しだけ眠ってしまおうか。
そうして、寝息を立てる彼の耳に一度だけ、『好き』だと呟こう――…

「トキヤは恥ずかしがりやだね」

そんなことをかんがえながら何の気なしに音也の髪を撫でていると、
不意にそんなことを言われてしまう。

「な、変なこと言わないでください!」
「変な事じゃないよ!今だって目あわせてくれないし!
 なのに、なんでさっきはキスしてくれたの?なんでおれのことぎゅってしてくれてるの?
 ねぇねぇトキヤぁ、教えてよー」

前言撤回、音也はどうやら『好き』と言って貰うのを諦めてはいなかったようだ。
しかも、今度は自分が彼の頭を抱き寄せていたから、自然と上目遣いになっていて、
先程よりもおねだりの威力が数倍増している。
トキヤは、はぁ、とため息をひとつつくと、音也の頬を両手でむにっと挟んで
こどもに言い聞かせるようにまっすぐ目を見て言葉を紡ぐ。


「あなたが無邪気に甘えてくるからでしょう?
 その瞳も声も仕草も、可愛くて仕方ないんです。
 だからキスもしたしセックスもしました」
「おれのこと、すき?」
「〜〜、…はい。まったくもう、あなたには敵いません。
 ずっと自分の気持ちに気付かない振りをしていたのに、かんたんに自覚させられてしまいました」


いいですか、あなたの要望には応えました。だからすこし黙りなさい、
…そういう思いを込めて言ったのに、どうやら彼にはそれは欠片も伝わらなかったようだ。
音也は一瞬の間の後、まるい瞳をきらきらと輝かせながら、あまえるようにトキヤの手に自分の手を添えた。

「…気付かないふり、ってことは、ずっと前から好きでいてくれてたってこと?」
「!いえ、そんなことは…」
「そうだったんだ…そっかそっか、へへっ」
「〜〜っ!」
「もうおれ、今ので充分だよ!トキヤのぶんも俺がたくさん、たっくさん好きって言ってあげるからねっ!」
「ほんとうに、あなたという人は……」

――あぁ、もしかしたら、自分は一生音也のおねだりに逆らえないかもしれない。
トキヤは頭に浮かんだそんな予感を振り切るようにぶんぶんと首を振ると、
お返しとばかりに音也のくちびるにキスをした。
せっかく治まっていたからだの火照りがまたぶり返してしまいそうなほどの濃厚なキスに、
音也の頭の芯がくらりと揺らぐ。

「――ぷは、はぁっ、トキヤ…?」
「その必要はありません。私もあなたが飽きるくらい、たくさん好きって言いますから」

息ひとつ乱さずにそういってにこりと笑うトキヤの笑顔に、今度は音也が照れる番だった。





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改定履歴*
20111110 新規作成
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