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弟の恋人に、恋をしました。 -8-

「おつかれさまでしたー!」
「今日もありがとうございましたにゃ!お先に失礼しますっ!」

予定よりニ時間程おした収録をようやく終え帰路についたHAYATOをテレビ局の出入り口で出迎えてくれたのは、視界いっぱいに輝く夜景だった。数え切れない眩しいライトが自分を照らしていたテレビ局とは違って、ここでは街路樹が主役だ。まるで自分が先程まで着ていた衣装のようにきらきらと光る街路樹たちは、街中をクリスマスムード一色に染めていた。

ここ数週間街全体を覆っていたこのきれいなイルミネーションとも今日でお別れかと思うと、それだけですこしほっとした。なにもクリスマスが嫌いなわけではないけれど、この季節はどうしても、幸せそうなカップルの姿ばかりが目に入る。手を繋いで、何気なく街を歩いて、楽しげに会話を交わして。その全てが、今のHAYATOにはけして手に入れられないものだったから。眩しくて仕方なくて、少し鬱陶しいくらいだったのだ。


けれど不思議なもので、今日でお別れかと思うと、なんだか少しだけ寂しくもあった。今年はプライベートで何もクリスマスらしいことはしなかったし、最後くらいゆっくりツリーを見て帰ろう…そう決めたHAYATOは、テレビ局の裏手からツリーのあるエントランス前の広場へと足を向けた。

予想通り広場にはたくさんの人がいたけれど、こうやって度の入っていない眼鏡をかけてマフラーを巻いていればまず気付かれることはない。現役トップアイドルが無防備にもこんなところに居るなんて誰も予想しないだろうし、なにより、今日はクリスマスで、みんな隣にいる彼氏彼女に夢中で周りなんて見てやしないのだ。


吹きさらしの広場に入るとぴゅうっと強い北風が頬を切り、HAYATOはその冷たさに慌てて巻いていたマフラーに顔を埋めた。思わず手を突っ込んだポケットに冷たい金属の感触を覚えて、ため息をひとつ。広場の片隅の花壇に寄りかかると、その無機質な金属を取り出した。開いた途端にぱぁっと光る画面に映し出されたのは、『新着メールあり』のアイコンだ。仕事終わりに携帯メールをチェックするこの瞬間が、ここ最近一日でいちばん緊張する瞬間だった。






改定履歴*
20111225 新規作成
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