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弟の恋人に、恋をしました。 -7-

『ゆっくり息はいて…、ちから抜けますか?』
「ふぅ…っ、っく、はぁっ」
『いいこ』

かくんと力の抜けた音也の体をゆっくり労わるように擦っていた右手は、
程なくしてまた後孔に触れた。指がゆっくり挿入され、中をかき混ぜられる感覚が生々しい。
先程とは違うゆっくりと解すような愛撫は、確実に音也の中の快感を引き出してゆく。
開いている左手で性器を扱かれて、気持ちよさでどうにかなってしまいそうだ。
そのうちに熱い熱の塊が宛がわれて、それが何なのかを理解した途端に一瞬からだが強張った。

「あ…」
『挿れますよ』
「!!やぁあっ、や、やだ、HAYATO、はやと、やめ…っ」
『トキヤ、です』
「…っ! と、トキヤ…」
『好きです、音也、可愛い…』
「あっ、あっ、トキヤ、ときやぁ、すき…っ」

ぐっとHAYATOが腰を前に出して、大きく勃起した性器を音也の中に挿れてゆく。
大きく張りつめた先端を飲み込む瞬間、からだを固くさせて息をのんだ音也を
甘やかすようにキスを落とすと、HAYATOはそのまま腰を前後させ始めた。
幾度も幾度も名前を呼ばれて、奥の敏感な部分を擦られて、音也はもうそれからのことは覚えていない。

ただ、こみ上げてくる快感を我慢できずに迎えた幾度めかの射精の瞬間、
自分の中でHAYATOの性器がびくびくと痙攣するのがわかった。
同時に腹の中がじんわりと温かくなって、あぁ、彼も射精しているのだ、と頭の片隅で理解する。

「はぁっ、は、…トキヤぁ」
『…音也』
「ん、キスしたい…」

数回に分けて注いでも出しきれなかった精液を全て音也の中に出そうと
ゆるゆると腰を動かす男が、それ以上何もせずに自分を見つめてくるのが不思議だった。
どうしようもなくキスがしたいのに、それがあたえられないもどかしさに負けて思わず強請ってしまうと、
それでようやく唇が触れる。随分熱を持ってしまった自分とは違う、ひんやりとした唇がここちいい。

射精後特有の気だるい心地よさに包まれて思わずこのまま眠ってしまおうかと思った音也の頬に、
ぽたりとひとつぶ、雫が落ちてきた。驚いて閉じかけていた瞼を無理やり開ければ、
目の前にあるのは目にいっぱいに涙を溜めたHAYATOの姿。

「えっ、ど、どうしたの?」
「……」
「HAYATO?大丈夫…?」
「音也、くん」

音也がHAYATOの名前を呼ぶと、返ってきたのは先程までの『トキヤ』としての声ではなく
彼本来の声で紡がれる自分の名前だった。ひどく弱弱しいそれと彼が始めて見せる涙に
心配になった音也は、そうっとHAYATOの頬にてのひらで触れる。

HAYATOは一瞬驚いたように目を丸くし、その反動で大粒の涙がぽろぽろと零れ落ちたが、
彼はそれを気にする事もなく目を瞑ってしあわせそうに音也の手に頬を摺り寄せた。

「ごめんね、トキヤの代わりでも大丈夫だって思ったのににゃあ…」

自虐気味に笑いながらちいさな声で紡がれる彼の本心が耳に届いた瞬間、
音也は胸の奥がきゅうっと苦しくなる感覚を覚える。
『HAYATOが嫌なら、ボクのことトキヤだと思って』それを言ったのは、確かにHAYATOだ。
そうして自分はその言葉に従い、いけないことだと解っていながらもからだを許してしまった。
恋人の名前を繰り返し呼ぶことで、今自分を抱いているのはトキヤなのだと、自分に言い聞かせながら。

――けれど、どうして気付かなかったのだろう。HAYATOは自分のことを好きだと言ってくれた。
好きな相手と初めてのセックスをする時に、その相手が自分を通して別の人物を見ていたとしたら、
誰だって傷つくに決まっている。

ごめんね、俺がバカだった。HAYATOのことを傷つけてしまってごめん。
そう伝えたいけれど、トキヤのことを想うとそれもできない。

「音也くん、…『ボク』を見て。ボクはトキヤじゃなくて、HAYATOだよ」

きっと彼は、自分でも言わない方がいいと解っているのだろう。
それでも抑えられないというように、苦しそうに気持ちを伝えてくれるHAYATOに、
音也は気付けば自分からキスをしてしまっていた。




end

改定履歴*
20111116 新規作成
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