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弟の恋人に、恋をしました。 -4-

「これでよし…っと。トキヤがここまでお酒に弱いとは思わなかったにゃあ」
「うん、俺もびっくりしたよ、お酒っておそろしいね」

結局それから食事の後片付けをして入浴を済ませ、いくら起こそうとしても
その気配すらないトキヤを来客用のベッドに寝かせたのは、
時計の針がもうすぐ12時を指そうとしていたところだった。

HAYATOのマンションはトップアイドルらしく広々とした間取りをしていて、
トキヤや音也が遊びに来たときにはこの部屋に泊めてもらうことも多い。

「ふふっ、いたずら大成功だったねっ」
「HAYATO、明日トキヤにおこられちゃうよ?」

笑い声で微かに身じろぎするトキヤの気配に、ふたりは顔を見合わせて
唇にひとさし指を立て、「しーっ」というジェスチャーをする。
そのタイミングがあまりにも息ぴったりだったものだから、これじゃトキヤとHAYATO、
どっちが音也のパートナーかわからないねなんてことを言いながらふたりは客間を後にした。

「よっし、じゃあボクたちも寝よっか!音也くん明日は仕事〜?」
「うん、午前中はレッスンで、午後から雑誌の取材とか、色々」
「そっかぁ。トキヤも午後にはお酒抜けてるだろうし、よかったねっ」
「…あ、HAYATOこそ早く寝なきゃ!おはやっほーニュース!」
「だーいじょうぶっ、明日は土曜日だから、ボクも仕事は昼からなんだ」

二人とも朝寝坊できるなんてめずらしいね、じゃあもうちょっとだけ話していようか、
そんなことを言いながらHAYATOは風呂上りの音也にミネラルウォーターのボトルを差し出した。
いくら広い間取りといえどもさすがに客間はひとつしかなくて、
そこにはトキヤが潰れてしまっている。だから必然的に、音也はHAYATOの部屋で寝ることになった。

もちろん音也は、リビングのソファでいいよと遠慮はしたのだが、
そんなことをHAYATOが了承する筈もない。男同士なんだから気にしないで、それより眠くなるまで
色々話したいにゃぁといつもの調子で言われると、音也もそれを断る理由なんてなかった。

「音也くんはトキヤのことが好き?」
「――っ、え?」

色々な話をして、たくさんたくさん笑いあって。洗いたてだった音也の髪が
すっかり乾いてしまった頃、ふたりはようやく一緒のベッドに潜り込んだ。
ベッド横の間接照明だけが柔らかく照らす部屋はなんだかとても落ち着いて、
音也は心底気持ち良さそうにぐっとひとつ伸びをする。子供のように無邪気な仕草を
微笑ましく見守りながら、HAYATOはごくごく普通にそんな話題を持ち出した。

「隠さなくてもいいよ〜トキヤ、かっこいいよねっ」
「う…うん」
「かっこよくて優しくて、理想の恋人ってとこかにゃ?」

仰向けに寝転んでいた音也は、慌てて抱えていたクッションで顔を覆ってしまった。
実際付き合っているわけだし、HAYATOはトキヤの兄だし、自分ももう随分仲良くなっているし、
別に隠す理由なんてないのかも…そうは思うものの、
改めて『恋人』だと口に出すのは恥ずかしい。
なんと返していいか解らず暫く考えを巡らせていると、HAYATOがくすくす笑う声が聴こえてくる。

「ホント、優しいよね…僕たち双子でしょ?トキヤはね、小さい頃から
 僕が欲しがるものは何でも譲ってくれたんだ。欲しかったおもちゃも、
 二段ベッドの上の段も、だいすきだった幼稚園の先生も…全部全部、僕に譲ってくれた。なのに」
「HAYATO…?」
「音也くん、キミのことだけはダメなんだって」

HAYATOがいつになく真面目な口調で紡いでゆく言葉に、一瞬耳を疑う。
抱えていたクッションをずらすと、寝転んでいる自分の隣に座って
穏やかな表情を浮かべるHAYATOと目が合った。
次の瞬間彼はにこりと笑ってみせたけれど、いつものアイドルらしい笑みではない。
この一年一緒にいたけれど、初めて見る寂しげな笑顔だった。

「最初はね、なんでだろうって思ってたんだ。ヒトにもモノにも執着がなかったトキヤが、
 どうしてキミにだけは夢中になるんだろうって。だけど一年間一緒に居てわかったよ」
「え…ぁ、」
「音也くんは、あったかいね」
「ちょ、HAYATO?」
「あったかくってやさしくて…離れてると、会いたいって思う。
 会えたら、もっと一緒にいたいって思う。一緒にいると、キスしたくなって」

クッションを握っていた手をきゅっと握られて、思わず変な声が出てしまう。
ベッドに座っていたHAYATOの顔がゆっくり近づいてきて、抱きしめていたクッションが
取り去られて、顔の横に腕をついて閉じ込められて。
このままではだめだということは理解しているのに、音也のからだは指一本すらも動かなかった。
程なくして、ふわりと唇が重なる。トキヤのそれとおなじ、すこしひんやりとした唇だった。

「ん、――っ、ぁ、」
「…そろそろ、キスだけじゃ足りなくなってきちゃったにゃあ」






改定履歴*
20111115 新規作成
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