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弟の恋人に、恋をしました。 -3-

先程胸につかえていた負の感情をすっかり忘れることはできなかったが、
それでも3人でいるとやっぱり楽しい。
やはり、兄であるHAYATOも恋人である音也も、どちらも自分にとって大切な存在なのだ。
二人が仲良くしてくれるのは、いいことではないか。
マイナスの方にばかり考えるのは自分の悪い癖だ――
トキヤはそう自分の中で整理をして、二人と一緒にリビングで食卓を囲む。

「そういえば今日、新人さんがボクの楽屋に挨拶にきてくれたんだよ〜。
 それで、トキヤと音也くんが来てくれた時のこと思い出しちゃった。
 ちょうど去年の今頃だよね、懐かしいねっ」
「うわぁー…早く忘れてよ、恥ずかしいよ、おれ、ガチガチに緊張しちゃってさぁ…」
「あの時の音也くん、すっごくすっごく可愛かったにゃ〜」
「わっ、擽ったいよHAYATO、ちょ…あははっ!」

音也は相変わらずHAYATOに懐いていたし、HAYATOはそんな音也が可愛くて堪らない
というようにわしゃわしゃと赤い髪を撫で、しまいには髪や頬に軽いキスまでしていた。
これは最早見慣れた光景で、音也も慣れたようにくすくす笑いながら受け入れている。

「!!こら、ちょっと何をしているんです二人とも。離れなさい」

けれど何だか今はそれを冷静に見ていられなくて、慌てて引き離してしまった。
音也がきょとんと自分を見上げる綺麗な赤い瞳には、先程自分とキスをしていた時のような
嬉しそうで気持ち良さそうな様子は欠片も見られなかったから、今度は胸の奥の棘は痛まなかった。

それでも、どきっとしたことには変わらない。
仔犬を躾けるようにぺちんと頭をたたいてみると、
音也は「ごめんねトキヤ」とすこしだけ眉を下げて笑っていた。

「あの時はさ…だって、初めてだったんだもん楽屋挨拶とか!もう緊張でしんじゃいそうだったよぉ…」
「あなたでも緊張なんてするんですね、音也」
「するよー?もうおれトキヤが一緒にいてくんなかったらボロボロだったかも」
「なっ…あなたはまたそういうことを」
「?ほんとだよ。トキヤと一緒にデビューできて、ほんっっとよかった!!」

反則、だと思った。
向日葵のようにあたたかい笑顔でそんなことを言われては、顔が赤くなるのを抑えられない。
この顔の火照りをどうすれば誤魔化せるかと考えて、
トキヤは目線を音也に向けたままテーブルの上に置いてあったビールのグラスをがっと掴むと、
そのまま一気に飲み干した。

ちなみにここに酒があるのは、HAYATOのいたずらである。
トキヤは年齢だってまだ18だし、当然酒を飲んでいい歳ではない。
初めての酒は顔色を誤魔化してくれるに留まらず、トキヤの目の前がくらりと揺らめく。
とても体を支えてはいられなくて、そのまま、目の前の音也にもたれかかるように倒れこんだ。

「トキヤ!?えっ、トキヤ…っ、ちょ、大丈夫?トキヤぁしんじゃやだ!!」
「……死にはしません。が、すこし静かに…」
「やだやだ、トキヤー!」

トキヤの死にそうな声と、それ以上につらそうな音也の声が響くリビングには、
おいしい鍋を頬張りながらのんびりと目の前の楽しい光景を眺めるHAYATOの姿があった。

「ふたりは仲良しさんだにゃ〜」







改定履歴*
20111115 新規作成
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