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弟の恋人に、恋をしました。 -2-

あれから音也たちW1はHAYATOと幾度も共演を重ね、その度にHAYATOは音也に構い続けた。
理由は単純に、最愛の弟であるトキヤのパートナーなのだから
仲良くなれるならその方がいい…そう思ったからだ。
兄としての気質を兼ね備えたHAYATOの包み込むような優しさと明るさは、
あっという間に音也の緊張を取り去ってしまい、彼本来の人懐こい性格もあって
ふたりはすぐに打ち解けた。トキヤもそんな二人を見て、ほっとしたような表情を見せる。

トキヤと音也が住んでいるシャイニング事務所の寮と、HAYATOのマンションが
程近い距離にあるという偶然も手伝って、たまのオフやスケジュールの空き時間には
誰が言い出すともなく一緒に過ごす事が多くなった。

もっとも、集まろうよ!と言い出すのは音也かHAYATOで、
トキヤはそれに巻き込まれる…と言ったほうが正しいのだが。
それでも、時間のある時にトキヤが二人と会うことを拒否したことは一度だってない。
結局はトキヤだって、兄や音也と過ごすことが好きなのだ。

今日も今日とて、トキヤと音也はHAYATOと3人で夕食を摂るためにHAYATOのマンションを訪れていた。
事のはじまりは、トキヤとHAYATOに向けて送信された音也の『みんなで鍋が食べたい!』
このひとことのみのメールだ。今日は冬の入り口らしく冷え込む日で、
音也は仕事の休憩中に半ば無意識のうちにこのメールを送信した。

一緒の楽屋にいたトキヤは「口で言えばいいでしょう?」と音也を小突いてきたが
その表情には『まったくこの子は仕方ないですね』という気持ちがありありと現れていたし、
HAYATOに至っては『じゃあ、お仕事が終わったらボクの家に集合ねっ!ちなみに海鮮鍋がいいにゃ〜』
と、これまた一斉送信で返事のメールを送ってきたのだ。



****

「なんで私がこんなことを…」
「まぁまぁ、そんなこと言わないでさっ!俺も手伝うから一緒に作ろっ」
「家主がいつ帰ってくるかもわからないのに、ですか?」

約束の時間は20時。この時間ならばお互い帰宅しているだろうということで決めた時間だった。
けれど、今ここにHAYATOはいない。撮影が当初の予定よりも押しているのだ。
仕事柄、予定通りにいくことの方がめずらしいことをふたりはもうその身をもって理解している。

だからそのメールを受信した時も、ふたりは大して動揺もせず、
弟であるトキヤが預かっていた合鍵でHAYATOの家に入り、
買い込んできた材料で支度を進めた。トキヤはもちろんエプロン持参、マメな男である。

「きっとすぐ帰ってくるよ!HAYATOそう言ってたし!それに俺、嬉しいよ。トキヤのごはん久々だな」
「…最近、忙しかったですしね」
「うん。俺、トキヤが作ってくれるごはん大好き!」
「食事だけ…ですか?」
「ぇ、あ……そ、そんなことないよ」
「じゃあ、なにが好きなのです?教えてください」
「――トキヤが、すき…」

それはまるで誘導尋問のようだったけれど、それでもトキヤにとって
音也からの告白は嬉しいものだった。普段は決して崩れることのない
ポーカーフェイスが崩れたかと思うと、そのままトキヤは手に持っていた食材を作業台に置いて、
隣に居た音也を腕の中に閉じ込めキスをする。

一瞬だけの啄ばむようなキスを終えて、すぐさまもういちど、
今度は深くてくらくらするようなものを。
気持ちがいいのだろう、かくんと膝から崩れそうになる音也のからだをしっかり支えて、
幾度も幾度もキスを重ねる。

「だ…めだよ、トキヤ、ここ…」
「HAYATOの家ですね。しかもいつ帰ってくるかわからない。興奮しますか?」
「ぅう、はずかしいよ」
「…かわいい、音也」

腕の中に閉じ込めている音也の頬が、みるみるうちに赤く染まってゆく。
黒目がちな大きな瞳はあっというまに涙で覆われて、それはひどくトキヤの劣情を煽った。
これはほんの戯れだと、キスだけだと思っていた筈の行為なのに、
自然にトキヤの右手は音也の服の裾から内部へ侵入していく。
それに気付いた音也がびくんとからだを震わせるのと、
聞きなれた明るすぎる声が耳に届いたのは同時だった。

「たっだいま〜!」
「!!!」

がたんっ、と大きな音をさせて自分から距離をとる音也を目にしたトキヤが、
おかしくてたまらないというように顔を綻ばせる。
ぱくぱくと口だけで『ごめんね、続きはあとでね?』と伺うようにして聞いてくる彼の髪を
よしよしと撫でて、玄関の兄に向かって「おかえりなさい」と極めて冷静な返事を返した。
それを聞いた音也が慌ててぱたぱたと足音をさせ玄関に向かっていく後ろ姿を見送りながら、
鍋の支度を続ける。

「HAYATOおかえり!」
「うん、HAYATOだにゃっ!音也くん、遅くなってゴメンね?」
「ううん!トキヤとごはん作ってたよ、もうすぐできるよ!仕事お疲れさまっ」
「わぁ〜うれしいなっ!早くたべたいにゃあ」

まるで仲のいい犬と猫がじゃれあうような雰囲気でふたりが入ってきたリビングに、
トキヤが出来上がったばかりの鍋を持ってやってくる。彼はふたりを見て一瞬だけ眉を顰めたが、
すぐに普段どおりのポーカーフェイスに戻って「ふたりとも、もう食べられますから手を洗ってきなさい」と
まるで母親のように注意をした。



トキヤの胸の奥には、ひとつちいさな棘が刺さっている。
その棘は音也とHAYATOがじゃれあっている姿を見る度に、少しずつ奥深くに刺さっていくようだ。
初めは、兄であるHAYATOと恋人である音也が仲良くなってくれる事がただ嬉しかったのに――
ここ最近では、それが少しだけつらくもある。

それは単なる子供っぽい独占欲なのだといくら自分に言い聞かせても、
なんだか心の奥がざわついて仕方なかった。
だからさっきだって、あんなことを音也に言わせてキスをしたのだ。
HAYATOの家でそうすることによって、彼は紛れもなく自分のものなのだと安心したかった。






改定履歴*
20111115 新規作成
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