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弟の恋人に、恋をしました。 -1-

ふたりの出会いは、一年程前になるだろうか。

早乙女学園を卒業後レッスンを積んだトキヤと音也が、
『W1』としてメジャーデビューを果たして迎えた初めてのテレビ収録の日。
新人らしく誰よりも早くスタジオ入りした彼らは共演者の楽屋に挨拶をして回っていた。
いくつかのアーティストに滞りなく挨拶を済ませ、次に訪れた楽屋。
そこでHAYATOは、音也と初めて会話を交わしたのだ。

「失礼します。はじめまして、W1です」
「トキヤー!今日が収録初めてなんだって?おめでとうにゃあっ!!」
「HAYATOさん、今日はよろしくお願いいたします」

HAYATOは入室の声で訪問者がトキヤだと気付くや否や、途中だったヘアメイクを中断させて
入り口へと飛んできて、人目も憚らずトキヤに思い切りハグをした。
もちろんこれは明るく無邪気な彼のキャラクターそのものの行動なので、
今更誰も驚きはしない――音也ひとりを除いては。

HAYATOがこの日この瞬間をどれだけ楽しみにしていたかは、きっと本人にしかわからないだろう。
彼は、双子の弟であるトキヤのことが誰よりも好きで、本当に大事に想っていた。
無理もない、物心ついた時から傍にいて、何をするのも一緒。
片時も離れず育ってきた、大切な二人だけの兄弟なのだ。

幼い頃からの夢であったこの世界に飛び込んだことに後悔はないし、
幸運なことに人気も出て今やトップアイドルとしての確固たる立ち位置を手に入れることができた。
スタッフや共演者にも恵まれ、そんな順風満帆な人生を歩んでいるHAYATOにとって、
寮でひとり暮らしをはじめてからトキヤと離れ離れになってしまったことだけが気がかりであった。

「ほんとに久し振りだねっ!元気にしてた?新しい寮の住み心地はどう?今度遊びに行っていい??」
「その辺のプライベートな話は後で…、今は仕事中ですから。
 本番前の貴重なお時間をいただいて申し訳ありません」

けれど今、目の前にその弟がいる。しかも自分と同じアイドルとしてだ。
もちろん今は駆け出しの彼だが、トキヤの魅力は自分が一番良く知っている。
きっとすぐにトップアイドルになるだろう、そう、自分の存在を脅かすくらいに。
とはいえ、HAYATOはそのことに関して全く危機感はなかった。
それよりも、そうなればきっとテレビや雑誌の撮影で顔を合わす機会が
増えるであろうという事の方が、HAYATOにとってはずっと重要だったのだ。

「あはは、相変わらずトキヤは固いにゃあ」
「…あなたは先輩ですから、当然です」
「兄弟なのににゃ〜。まぁいっか、…で、こっちのコは音也くん!正解、でしょ?」
「ええ。 …?音也、どうしました?」
「あ、え…っと」

先輩であるHAYATOに名前を呼ばれても、パートナーであるトキヤに促されても、
音也はこの日のために幾度も練習した定型文すら口に出せないでいた。
先程諸先輩方の楽屋を回っていた時まではできていたのに、だ。
そう、音也は、楽屋に入った直後からのHAYATOの歓迎ぶりに完璧に圧倒されてしまっていた。

「緊張してる?かわいいにゃぁ」

普通ならば、こういう時は新人から挨拶をするのが定石というもの。
けれど、音也ががちがちに緊張しているのをひと目で見抜いたHAYATOは、
共演者向けというよりはテレビで自身のファンに語りかける時のとっておきの笑顔と
人懐っこい口調で音也に自分から挨拶をした。

「音也くーん?はじめまして、HAYATOだにゃ!いつもボクの弟がお世話になってますっ!」
「えっ!?いや、俺…ちがう僕こそ、いや、こちらこそお世話になってま…っ痛って、舌噛んだ!」
「音也…慌てすぎです」

異例とも言えるその事態にいつもマイペースな音也も流石に慌てたのだろう、
何度も噛みながら挨拶をする彼の顔が一気に赤く染まったことを、
HAYATOは今でも鮮明に思い出すことができる。






改定履歴*
20111115 新規作成
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