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magnet -3-

しばらくの後思い出されたのは、赤。
敵の海賊であるユースタス・キャプテン・キッドの髪の色だ。
いや、それだけではない、髪も瞳も、あの鍛え抜かれた身体を包む
ふわふわのコートだって、彼を彩る全ての色は赤だった。

ロー自身その首に2億という大金を掛けられた賞金首だが、
キッドの賞金はそれを軽く上回るものだった。
ローとキッド、それから麦わらのルフィは昨日オークション会場で初めて出会い、
事態のなりゆきで海軍相手に共闘することとなったのだ。

昨日まで、キッドとルフィはローにとって手配書の中だけの人物だった。
それが実際目の前に現れ、計らずも共闘し、それが案外楽しかったものだから
酒場で酒を酌み交わす仲になるまでそう時間はかからなかった。

本来は敵の海賊と酒を飲むだなんてありえないことなのだが、
ここは新世界への航路で避けては通れないシャボンディ諸島。
海軍もまだ島に滞在しているだろうし、聖地マリージョアも近い。
こんな所で騒動を起こしたくないという気持ちは共通のもの。
二人はこの状況に甘んじて、今だけはと部下を連れ酒場に入ったのだ。

『ユースタス屋、おまえすげー酒強ぇのな』
『あ?おまえこそそう見えて意外と飲んでんじゃん』
『そう見えて、って何だよ。おれは適量を知ってんの』
『さすがはお医者サマ、ってことか』
『残念、おれは外科医だ』
『似たようなモンだろ』
『おまえにとってはな』
『口の減らねぇヤツ』

キッドはいわゆる酒豪だった。そしてローは、自分の加減を熟知して適量を飲むタイプ。
それに付き合わされたクルーたちは、滅多にないこの事態に少々浮き足立っていて、
それほど広くない店内はまるで祭りのように賑やかだった。

『ユースタス屋、さっき言ってた島の…』
『せんちょー!おれらにも構ってくださいよー!』
『アイアイキャプテーン!キャプテン!きゃぷてん!ベポほっとくの寂しいよー!』

久し振りに自分の部下以外、しかも悔しいことに、賞金額だけで言えば
自分よりも格上の男とゆっくり飲める機会なんて初めてのこと。
ローは内心とても楽しんでいたのだが、酔いが回ったクルー達が
無邪気に邪魔をしてきて話が全然進まない。

『…なぁユースタス屋』

部下から慕われるのも良し悪しだな…なんて、
そんなことを思いながら纏わりついてくる愛熊を適当にあしらって。
ローがキッドに、『飲みなおさないか』と誘いを掛けたのは、それから直ぐのことだった。






改定履歴*
20110908 新規作成
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