magnet -2-
「…なんだぁ?あいつ」
そのまま食事と水を取りにキッチンへと向かうペンギンの後姿を見送って、
ローはあっけにとられたようにそう呟いた。
――あいつがあんな風に声を荒げるのはめずらしい。
それに、改めて『服を着ろ』なんて言われたのはいつぶりだろう。
上半身裸で寝るのは昔からの自分の癖で、ペンギンだってもう何度も見ているしそもそも同性だし、
それに、最近ではもうそこまで構っている暇はないとでも言うように放任だったというのに。
…朝から何か、イラつくような事があったのだろうか。
「あーもー、わかんねぇ」
ローはそこまで考えると、続きを考えるのを放棄した。
大体、怒っているように見えたのは自分の気のせいかもしれない。
あいつが戻って来たときにまだ不機嫌だったら、その時に直接理由を聞けばい…そう、思ったのだ。
面倒くさそうに寝癖のついた髪をかきあげて、もう一度ベッドに寝転んでみる。
お気に入りのベッドはふわふわで温かく、ローはしあわせそうに枕に頬を擦り付けた。
途端にふわりと香るのは、ローのしらない香水のかおり。
「うわ、なんだコレ」
視界の端に自分の肩が映り、それが部分的に赤く色づいているのに驚いたローが
慌てて再度身体を起こそうとすると、腰のあたりがズキンと傷んだ。
初めて感じるその強い鈍痛に、ローの表情が一気に曇る。
「え、え…??」
見ればその『赤い跡』は、肩だけではなく上半身のいたるところに残されていた。
ただごとではない自分の姿にさぁっと血の気がひいたローは、
寝起きではっきりしない記憶を必死に手繰り寄せる。
改定履歴*
20110908 新規作成
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