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僕の悪魔 -6-

「…セバスチャン」
「はい」
「降りる、もう、だいじょうぶだから…」

大きな手で抱き上げられ、まるでこどものようにあやされてしばらく経った後、
ようやく少し落ち着いたシエルは、人前で泣いてしまったという事実が急に恥ずかしくなったようで
俯いたまま執事の肩を両手でぐっと押して、降りたがるような素振りをみせた。

「だめです、坊ちゃん」
「何故だ?主人は僕だぞ」
「そのご主人様をひとりにしてしまってあんなに泣かせてしまいましたから。もう離しません」
「だ…って、それは」
「坊ちゃん、ごめんなさい。ひとりにしてしまって」
「ちが…僕がひとりにしろっていったから…」
「それでも、ひとりにするべきではなかったのです。たくさん、泣かせてしまいました」

大好きなひくくてあまい声でやさしく紡がれる言葉に、シエルの瞳から
せっかく止まっていた涙がまたぽろりとひとつぶ、頬を伝い落ちた。
セバスチャンは、ぽすんと肩に顔を埋めて抱きついてくるシエルごとソファに座ると、
その華奢でちいさな背中と後頭部に手を添えて、なにも言わずただそっとシエルを抱きしめてやる。

上等な素材の燕尾服にシエルの涙が落ち、染みができるのを厭う素振りも見せず、
包み込むような優しさで自分を抱きしめてくれる恋人。
その穏やかな雰囲気に誘われるように、シエルはゆっくりと涙の理由を打ち明け始めた。

「セバスチャン…」
「はい」
「僕、不安になったんだ」
「何が、でしょう。教えてくれますか」
「おまえが、僕と出会う前のこと、とか、考えて。
 …今はおまえは僕だけの執事でいてくれているけれど、
 契約が終わったら今までの契約者みたいに僕のことも忘れて、」
「坊ちゃん」
「そして…誰か他の人間の執事になって…っ、んんっ」

幼い胸にひっそりと隠されていた想いは、すべて口にすることはできなかった。
そのからだを抱きとめていた執事が、唇をキスで塞いでしまったから。
伯爵でも主人でもない、ただのシエルとしての頼りない声で紡がれる言葉を
その不安ごと飲み込むように深く口付けて、そのまま大きなソファに押し倒し、
悪魔は少しでもシエルの不安が消えるようにと願いを込めるように幾度もキスをした。






改定履歴*
20110813 新規作成
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