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僕の悪魔 -3-

ようやくお互いの顔が見れるくらいの暗がりの中、よくよく見ればシエルの蒼と紫の瞳には
うっすら涙の膜が張っていて…目線を合わせても次の瞬間にはすっと逸らされてしまう。
今現在シエルがこの行為に乗り気でないことは、火を見るより明らかだった。

「坊ちゃん…?そんなにお嫌でしたか?」
「嫌じゃない…」
「…?では眠かったですか?申し訳ありません、もう寝ましょうね」
「そうじゃなくって」

人間の姿をして完璧な執事を演じきっているとはいえ、悪魔は悪魔。
人間の、…人間の中でもさらに気分の変化が激しいこどもの心を把握するのは、
いかにセバスチャンと言えどもまだまだ困難な事だった。

恋人の泣き顔を見たくない一心でなんとか宥めようとするものの効果はうすく、
シエルの機嫌は悪くなってゆくばかりで、どうしたものかと考えあぐねていると
とうとう大粒の涙を零しながら本格的に泣き始めてしまった。
慌てた悪魔がせめてその涙を拭ってやろうと思っても、プライドの高いシエルは
泣き顔を見られないようにとその目元を腕で隠してそれを許してくれない。

「坊ちゃん…」

普段大人ぶっているシエルがこんなに涙を流すのにはそれ相応の理由があるのだろうに、
先程までキスをしていた唇は泣き声をかみ殺すよう固く閉じられたまま。
セバスチャンは何も言葉にできずただその細く美しい髪を撫でてやることしかできなかった。

「ぅ、…っ、く……」

時折漏れる嗚咽が耳に届く度、真っ白なシーツに涙が落ちてゆく度に
セバスチャンは胸がぎゅうっと締め付けられるような錯覚を覚える。
しばらくそのまま、目がまっかになるまで泣き続けていたシエルだが、
あやすようなキスを額に落とされた途端に、ぐい、と執事の肩を押し返した。

「セバスチャン、やっぱり今日は一人で寝る」
「それはいいですけど…如何なさったのです、坊ちゃん」
「…なんでも、ない…」
「なんでもなくないでしょう?こんなに泣いて…」
「いいから…っ、いいから、一人にしろ。命令だ」

涙をいっぱいに湛えた瞳で真っ直ぐに見据えられ下される『命令』に抗う術を悪魔は持っていない。
セバスチャンは自分の心を押し殺したまま、いつもの返事をしてシエルの寝室を後にした。

ベッドの中でひとりからだを丸めて縮こまっていたシエルの耳に、
愛しい足音がゆっくり遠ざかってゆく音が届く。
それがとうとう聞こえなくなってしまった途端に、
シエルはぎゅうっと目を瞑ってこれ以上涙が零れないようにと枕に顔を埋めるのだった。






改定履歴*
20110803 新規作成
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