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僕の悪魔 -1-

ファントムハイヴ家当主の私室のいちばん奥にある、豪華なバスルーム。
本来ならここは当主であるシエル専用のものなのだが、
この屋敷にはもうひとり、ここを使える人物がいた。
シエルの執事兼恋人であるセバスチャンである。

もちろん自分だけで使うなんてことはなく、情事の後にシエルにねだられて
一緒に入るというものなのだが、ここ最近はそれがまるで日課のように続いていた。

情事後でくたりとちからが抜けたシエルと一緒にバスタブに張った湯に浸かり、
文字通り頭のてっぺんからつま先まで丁寧に洗いあげた執事は、
よくあたたまったからだが冷めないうちに主人の髪から零れおちる雫を
やわらかなバスタオルで拭きあげて、洗いたての夜着でそのからだを包む。

流れるような一連の動作には寸分の迷いもなくて、シエルは半分夢の中にいるような気分で
大きな手が胸元のボタンをひとつひとつ留めてゆくのをただじっと見つめていた、筈だった。

「おまえは、完璧な執事だ」
「…と、言いますと?」

シエルが言葉少ななのはきっと眠いからだろう、早くベッドにお連れしなければ――
そう思っていた執事は、不意に掛けられた言葉にひとつ瞬きをして、
主人が次の言葉を紡ぐのを待った。
ところがいくら待ってもその続きを言う気はないのか、沈黙が二人を包むだけ。

今日は夏とは言えすこし冷える日で、湯冷めを心配したセバスチャンは
自分のシャツのボタンを留めるのもそこそこに主人をベッドへ連れてゆくことにした。
話を聞くのならば、この主人をベッドにお連れして暖かい掛布を掛けてからでも遅くない。

「坊ちゃん、とりあえずベッドに行きましょうね」

ちいさな身体をひょいと抱きかかえ寝室へと向かう間大人しく抱かれていたシエルは、
ベッドにそっと降ろされると執事のシャツをきゅっと引っ張り、無言で一緒に寝ることを要求した。

幾度肌を重ねてもなお上手に甘えることのできないシエルの可愛らしい仕草に
くすりと笑って誘われるまま隣に寝れば、途端に擦り寄ってくるあたたかな体温。
右腕を頭の下に滑り込ませてやれば、それでようやく満足そうに瞳が閉じられる。

「寒くないですか?」
「ん、…もっとぎゅってしろ」
「はいはい。子守唄もご所望ですか?」
「こどもあつかいするなってば…」
「申し訳ありません。とっても可愛らしくて、つい」

行為が終わった後、こうやって甘えるように腕枕をねだるのはシエルの癖だった。
いつもならばこのまま、そうっと頬や髪を撫でてやればそれだけで夢の世界に旅立ってしまう可愛い恋人。
けれど今日は、その前にひとつ聞かないといけないことがある。
放っておけば寝入ってしまいそうなシエルの額にひとつキスをして、執事は質問をしてみた。






改定履歴*
20110731 新規作成
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