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真実の愛のキス?

「する」
「はい?」
「キス!するって言ってるんだ!!」
「おや、いいのですか?」
「いいも何もない、だけどするのは僕からだ。おまえはじっとしてろ」
「了解いたしました。また突き飛ばされると困りますしね」
「一言多い!」

少し挑発してみるだけでこうも思い通りに動いてくれる主人に笑ってしまいそうなのを我慢していると、
ひょいっと抱えられて当主が座るべき椅子に降ろされ、目を瞑るよう促される。
いくら元に戻るためとはいえ『自分』に迫られるなんて気持ちのいいものではないから、
それには素直に従った。

「…坊ちゃん?」

けれど、いくら待っても次にくるはずのキスは与えられなくて…
そうっと目を開けてみれば、そこにいたのは神妙な面持ちで
自分に覆いかぶさっている自分の姿だった。

「わぁっ!急に目を開けるな!」
「申し訳ありません、あまりに遅かったので、つい」
「今しようと思ってたところだ」

――キスとはそんなに時間の掛かるものだっただろうか。さっと済ませて元に戻りたい…。

こうなってもなお煮え切らないシエルの態度と言葉に、ほんの少しの苛つきが芽生える。
セバスチャンもシエルの傍で暮らすようになってニ年余りが過ぎ、
だいぶ気が長くなったとはいえやはり元は悪魔。
もう待つのも限界とばかりに目の前の男の首に両手を回し、ぐいっと引き寄せ唇を重ねた。

「〜〜!??っん、は、」
「…こら坊ちゃん。じっとして」
「んんんっ!んー!!」

…一回で、やめるつもりだったのだ。
けれど慌てるシエルの反応があまりに可愛く思えて。
セバスチャンは文句を言うために開かれたであろう隙間から舌を進入させ、
そのまましばらく、口の中のあまい舌を堪能し続けた。

うっとりと瞑られた瞼を縁取る長い睫毛から、無意識のうちに滲んできたのであろう涙が
一滴零れ落ちてゆくのが視界に入って、それを拭うために唇を離す。
ぺろりと舐めとったところでいつかのように白い煙がふたりを包み、
セバスチャンが次に目を開けた時には、ソファに座ったまま
蕩けた瞳で自分を見上げているシエルの姿があった。

「…本当にキスで戻るとは、あの方の少女趣味は筋金入りですね…」
「――っ、は、はぁっ」
「おやおや、坊ちゃん大丈夫ですか?あれくらいで息が上がるなんて、下手くそですねぇ」
「うるさい…っ、はじめてなんだから仕方ないだろ。大体、ぼくからやるっていったのに」
「坊ちゃんが焦らすから我慢できませんでした。もう一度してくださっても構いませんよ?」
「うるさい、ばか悪魔っ!」

本来は元に戻るための手段でしかなかったキス。
ただ、唇を重ねる感覚と舌を絡めた時に感じた快感が予想以上に心地よくて…
セバスチャンはしばらくの間、視線の先にあるシエルのさくらんぼのように赤く色づいた唇から
目を離すことができなかった。

今までただの暇つぶしとしか思っていなかった主人相手に、すこし興味を示し始めた悪魔の目。
きれいな紅茶色のそれに射抜かれたまま動けずにいるシエルの唇が再び奪われるまで、あと数秒。





end

改定履歴*
新規作成 20110727

「…ねぇ坊ちゃん」
「何だ」
「キス、意外と気持ちよかったですね」
「…は?」
「もう一度したら、また入れ替わっちゃうんでしょうか…」
「知るか!というか、しない、しないからなっ」
「グレルさんに聞いておくべきでしたねぇ。嗚呼、でも入れ替わればまたキスをすればいい話ですね」
「ね、じゃない!馬鹿悪魔、さっさと仕事に戻れ!」
「こんなに赤いお顔でそんなことを言っても可愛いだけですよ、坊ちゃん」

リク内容:グレルのいたずらで坊っちゃんとセバスチャンの中身が入れ替わり、
最後には元に戻ってハッピーエンド/全年齢向け、またはR18どちらでも(S様)
ありがとうございました!
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