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第58話の続きを妄想した結果/『嫌いにならない?』セバスver

「さて坊ちゃん、参りましょうか」
「ああ。死神達より先にリアンを見つけなくては」

エリザベスとスネークを救命ボートに乗るエドワードに託し、『必ず戻る』と約束をしたのが数分間。
先程の死神達の来襲の際に脚を痛めてしまい歩くこともままならないシエルは、自分を抱き抱えている
セバスチャンに指示をしながらこの事件の鍵を握っているリアンを探すため船内を捜索していた。

とは言え居場所に心当たりなんてないから、ドアというドアを手当たり次第開けてゆく作戦だ。
幾つめかの豪華な装飾を施されたドアを開ければ、そこは一等宿泊者専用のサロンだった。
本来ならば綺麗に整えられていたであろう室内は傾いた船のおかげで見るも無残に散らかっていて、
テーブルから滑り落ちた花瓶と真紅の薔薇がシエルの気持ちを余計に焦らせた。

「…ここにも、いないようだな」
「ええ」
「よし、他にヤツがいそうなところは…」

てっきりこのまま廊下へと戻り別の部屋を探しに行くのだと思ったシエルの耳に、
バタン、とセバスチャンが後ろ手にドアをしめる音が響く。

「セバスチャン?何して…んっ」

不思議に思って自分を抱き上げている執事の顔を見た瞬間だった。
大きな手に顎を支えられて、噛み付くようなキスで唇を塞がれたのは。

「んっ、ん、ぷは、っはぁ」
「こら坊ちゃん、おとなしくして」
「冗談言ってる場合じゃな…っんう、ん――ッ」

突然の事態に慌てたシエルが執事の首に回していた右手と空いていた左手で
一生懸命肩を押し返そうとしても、当然ながらセバスチャンはびくともしない。
それどころかその可愛らしい抵抗を楽しむかのように口角を上げた悪魔は、
時折目を開けてシエルの表情を確認しながら何度も何度も深く口付ける。

「んう、も、やめろってば…セバスチャンっ」
「あとすこしだけ、坊ちゃん補充させてください」
「あ!」

否定の言葉を口にするために開けた隙間から悪魔の舌が進入ってきて、
シエルのこどもらしい短いそれを絡めとって。ちゅうっと吸われ甘噛みされれば、
鼻にかかった甘い声が漏れる。悪魔の肩に置いていた手には力が入らなくなって…
最早押し返すというよりは縋り付いていると表現した方が合っているかもしれない。

慌てているためか、普段より息の仕方が下手になって酸素が足りなくなった頃、
まっかに充血したさくらんぼのような唇はようやく解放された。

「――やっと貴方にキスできました」

セバスチャンは、飲み込みきれずシエルの口の端から零れた
どちらのものともわからない唾液を手袋で拭ってやりながら、甘やかすように頬に唇で触れる。
その視線は、今しがたまでなされていたキスの強引さとは正反対のやわらかいものだった。

「…足りなかったのか?」
「はい、もう足りなさ過ぎてずっと我慢していました」
「今日だって昨日だってたくさんベッドでしたのに」
「坊ちゃんがエリザベス様と仲良くしているのを見ると、消耗が激しいんです」
「だから、あれに付き合うのは当主としての僕の役目だって言って」
「わかっています。嫉妬深い悪魔はお嫌いですか?もう恋人でいさせてはくださいませんか?」

主人の仕事を差し置いて盛るような躾のなっていない飼い犬を叱ろうと思っていたのに――
大きな手で頬や耳たぶを撫でながらじっと自分を見つめてくる視線と、
許しを請うようなひくくてあまい声に、シエルはこれ以上きついことばを口にする事ができなかった。

「…そんなこと、だれも言ってない」
「じゃあ『嫌いにならない?』」
「――!おまえ…」
「ねぇ坊ちゃん、答えてください。このような状況にも構わず貴方を物陰にお連れして、
 何度も浅ましくキスをする私をお嫌いになりましたか?」

先程からシエルの蒼を捉えて離さない紅茶色の瞳が、少しだけ不安げにゆらりと揺れる。
それを認めた瞬間に、シエルは心がきゅうっと締め付けられた気がした。
『そんなことない』そう言うべきなのに、言いたいのに、言葉が出てこない。
セバスチャンはきっとそんなシエルの心の内を解っているのだろう。
急かすようなことはせず、ただじっと答えを待っていた。

「嫌いな訳、ない」
「嫌いでないなら、好き?」
「〜〜っ、…き、すき、だ。あーもう!好きだ馬鹿!これで満足か!」
「大満足です、坊ちゃん。ありがとうございます」

しばらくの間の後、シエルがやっとの想いで口にした答えを聞いた途端に、
それまでの表情から一変した嬉しそうな表情でぎゅうっと自分を抱きしめてくるかわいい悪魔。

シエルは、その悪魔がご機嫌なときにする癖の啄ばむようなキスを幾度も幾度も受け入れながら、
あかくなった頬を隠すように恋人の首筋に顔を埋めるのだった。




end

改定履歴*
20110629 新規作成
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