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あくまで怪我人ですから -8-

カーテンの隙間から月の光が射し込む寝室に、静かな衣擦れの音が響く。
セバスチャンがシエルにまず『お願い』したのは、意外な程普通のことだった。

「では、服、脱がせてください」
「え」
「左手が痛くて動かせないのです。…ね?」

悪魔はそういってにこりと微笑んでみせ、シエルが頷くのを確認すると
そのからだをひょいと抱えて自分の腹の上に座らせる。
細くてちいさな指先がセバスチャンの白のシャツのボタンに添えられ、
ひとつひとつゆっくりと外されてゆく様子を見ながら、自由になる右手を
夜着の裾から露になっているほっそりした太腿に添えた。

「…左手が痛いと言ったわりには、僕を抱きかかえることはできるんだな」

一体どんなことをお願いされるのかとからだを固くしていたシエルだったが、
服を脱がせるだけというのに安心したのだろう。
少し余裕が戻ってきたように悪魔の言葉の矛盾を指摘しながら覚束ない手つきでボタンを外してゆく。

「抱きかかえるのが限界でした。力尽きました。もうだめです。」
「よくもまぁぬけぬけとそんなことを…、っあ!」
「坊ちゃん、お喋りもいいですけど、その調子ではボタンが全て外れる頃には夜が明けてしまいますよ」

けれど悪魔は都合の悪いことをこれ以上言われないように、とくすくす笑いながら
絶妙なタイミングでシエルの作業の邪魔をすることにしたようだ。
太腿に添えていた手を後ろへ滑らせ、奥まった入り口に触れるか触れないかの所を擽るように
刺激してみれば、シエルのからだはびくんとはねて指先はボタンから離れてしまう。
全部のボタンを外しきる頃には、シエルはへとへとに疲れてしまっていた。

「坊ちゃん、ありがとうございます」
「も、疲れた…」
「今度お着替えの練習しましょうね?だいぶ焦らされてしまいました」
「おまえが邪魔するからだろ!」
「指先ひとつに全力で感じてくださる坊ちゃんが可愛らしくてつい。」
「ばか、へんたい」
「怪我に響くのできつい言葉はナシでお願いします、坊ちゃん」
「都合のいい時だけ怪我人になるのはヤメロ」
「元気そうに見えても私はあくまで怪我人ですから。…では後ろを向いて、おしりをこちらに向けて」
「は!?」
「慣らさないと痛いでしょう?ほら」
「え、あ、わぁっ」

言うが早いか、セバスチャンはシエルのからだを抱えてひょいと後ろ向きにさせてしまった。
そうして、スラックスの留め金を外してシエルの右手を自分の下半身へと導くのだ。
慌てたシエルが手を引っ込めようとしても、まるでそんな反応はお見通しだとでも言うように
大きな手がシエルの手をぐっとソレに押し付けて離してくれない。






改定履歴*
20110620 新規作成
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