あくまで怪我人ですから -6-
情事の時の悪魔の姿は、思い出すだけで全身がぞくりと震えてしまうような色気を纏っていた。
自分をすっぽりと包み込んでしまう長身の恋人を見上げればその瞳には自分だけが映っていて、
自分だけしか知らない昼間よりずっと甘い声で囁くように名前を呼ばれて。
与えられる快感が強すぎてこわくなると、まるでそれが解るかのようにぎゅうっと抱きしめられる。
感じるのはいつもより幾分高い悪魔の体温、それから、おおきく脈打つ胸の鼓動。
大好きなにおいがふわりと自分を包み、それがたまらなく心地よくて目を瞑れば、唇をキスで塞がれる。
初めは焦らすように触れるだけのそれは、回数を重ねるにつれて次第に深くなっていき、
誘うように唇をなぞられて耐え切れず舌を差し出せばゆるく甘噛みされて腰が揺れる。
途切れることのないキスに夢中で応えていると、いつの間にか宛がわれていた熱くて固いモノが
入り口を擦って、たっぷり甘やかされながらゆっくりと、気持ちいいところばかりを責められて――…
「坊ちゃん?」
「ぅわあっ」
「どうしたのです、お顔が真っ赤ですよ」
そこまで考えたところで、不意に名前を呼ばれて顔を覗き込まれ思わず変な声がでてしまった。
声には出していない筈だから考えていることがセバスチャンに解るわけないのに、
詳細に情事を思い出してしまったという何ともいえない気まずさと罪悪感がシエルを包む。
「な、なんでもない」
「そうですか?…鼓動がこんなに早くなっていますのに」
「ひゃ…っ」
セバスチャンはシエルの枕にしていた右腕をすこしずらすと、そのままうすい胸へと耳を密着させた。
ひとつ外れている夜着の隙間から覗く肌に漆黒の髪が掛かりひどく擽ったい。
悪魔は脚を擦り合わせて快感に耐えるシエルの姿を目の端に捕らえると、
口角を上げてくすくすと笑いながらうすい夜着の上からちいさな乳首に舌を這わせる。
「あっ!こら、セバスチャ…」
「キスだけでは足りなくなってしまいましたか?仕方のないご主人様ですね」
「んっ、違う、ただ眠れなくて、いつもどうやって寝てたかって思い出して、それで」
「それで、私とのセックスを思い出してしまったのですか」
「う、それは…」
「違わないでしょう?でなければ少し舐められたくらいでこんなになりますか?」
尖らせた舌の先端でぺろりと舐め上げ、少し固くなってきたら唇で優しく噛みついて。
唾液で濡れた夜着から透けて見える、唇と同じあざやかなさくらんぼ色に色づいているそれに
ちゅうっと吸い付くと、シエルはからだをびくんと痙攣させて艶やかな吐息を零した。
改定履歴*
20110615 新規作成
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