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あくまで怪我人ですから -13-

絶え間なく聞こえていた嬌声が途切れてからほんの少しの後、
ファントムハイヴ家当主のベッドの上にはくっついたまま睦みあうふたりの姿が
やわらかい月の光に照らし出されていた。

「――そんな訳ないだろう。嘘をつくなと言ったはずだぞ、セバスチャン」
「嘘じゃありません。怪我は坊ちゃんの愛の力で治りました。」

シエルは射精後特有の心地いい倦怠感に身を任せてくったりと恋人に身体を預けていたし、
セバスチャンはそんなシエルの髪を撫でながら、時折その額や髪へと甘やかすように軽いキスを落とす。
こんな風にゆったり過ごす情事の後のふたりの時間は、悪魔のお気に入りだった。

「愛、って…僕が、おまえをか!?冗談も程々にしろ、いや、寝言は寝て言え」
「坊ちゃん大好きですありがとうございます私も愛してます」
「人の話を聞け!それから恥ずかしい事いうな、馬鹿!」
「恥ずかしくなんてないですよ。あ…けれど恥らう坊ちゃんは本当に最高でした、
 まっかなお顔で私に跨って、我慢できないというように必死で腰を振って。
 上気したからだに乱れた夜着が纏わりついていたのが印象的です。
 この夜着は初めての騎乗位記念に洗わずとっておきましょうか」

にっこりと綺麗な笑顔で今しがた終わったばかりの情事の感想を語り始めるセバスチャンに
慌てたシエルは、なんとか黙らせようと体を起こして枕元の時計にぐっと手を伸ばす。
大きなコレで殴られれば流石の執事といえどもすこしは痛いらしく、黙るのを知っていたから。

「!!!黙れ…ぁ!やっ」

ところがセバスチャンはそんなのお見通しだとでも言うように、
まだ繋がったままのモノでシエルの中を突き上げた。
途端に力が抜けてまた自分に倒れ掛かってくる体を受け止めて、額にキスをひとつ。

「はぁ、…っぁん」
「私はあくまで執事ですから、同じ失敗は致しません。坊ちゃん、時計はダメですよ?」
「ぁ、も、わかったから…抜けって。大体なんでいったばかりなのにこんなかたいんだ」
「おや、褒め言葉ですか?まったく貴方は可愛いですね。ほらじっとして」
「え、わぁっ」
「いいこにはご褒美です」

シエルの目に入っていた部屋の中の景色の上下がくるりと入れ替わり、後頭部にはお気に入りの枕。
性急な行為に対する抗議の言葉は、自分に覆いかぶさってくる執事のキスで言葉にならなかった。
すべて脱がされた夜着の代わりに、直接肌で感じる悪魔の体温が、悔しいけれど心地いい。

「ん、ん…ぷは、」
「坊ちゃん、キスお上手になりましたね」
「おまえが飽きずに何度も何度もするからだろ。…それより、怪我はほんとに治ったのか」
「ええ。もう傷は塞がっている筈ですよ。ほら」

そう言って、しゅるりと包帯をといた執事の肩からは、本当に傷がほぼ消えかけていた。
セックスひとつであれほどの傷が癒えるとは、悪魔とは本当にわからない生き物だ。
そうは思うけれど、恋人の身体から痛々しい傷が消えつつあることは単純に嬉しい。

セバスチャンの言葉を信じるとすれば、治癒には多少なりとも自分が役に立てたわけで。
なんだか嬉しくなったシエルは、傷があったところへぺろりと舌を這わせてみた。

「っ、坊ちゃん?」
「…まだだ」
「え」
「まだ、傷跡がうっすら残ってる。セックスで治るんだろう?ならばもう一度」
「――いいんですか?」
「何度も言わせるな」
「坊ちゃん、まさかまだまだお子様な貴方と2ラウンド目ができる日がくるなんて思ってませんでした。
 感動です…!ゆっくりしますからね!大好きです!」
「もう!いいから、はやくしろ。繋がったままだと焦らされてるみたいでつらい」
「イエス、マイロード。思い切り抱いてさしあげますからね」





****

「――そういう訳で、坊ちゃんはしばらく休養されます」
「わかりましたですだ!」
「坊ちゃんのお世話は私が致しますから、みなさんはくれぐれも大人しく、大人しく
 静かにお過ごしくださいね。坊ちゃんの体調に障ります」
「はぁーい!」
「バルド、貴方達の食事はキッチンに準備してありますから、よろしくお願いします」
「おう!任せとけ!」

開け放したままの寝室の扉の向こうから、声のトーンを落とした執事の声と
元気いっぱいな3人組の声がシエルの耳に届く。
そっと扉の閉まる音が聞こえて、聞きなれた足音がこちらに向かってきて。
寝起きでぼやける視界のむこう、寝室の入り口に現れたのは燕尾服をきっちりと着た恋人だった。

「坊ちゃん、起こしてしまいましたか」
「…ん、水」
「はい、すぐに」

喘ぎすぎて掠れてしまった声のシエルがだるそうに体を起こそうとするのを執事が慌てて制止する。
そうして、サイドチェストに置いていたグラスからひとくち水を含むと、そのまま口移した。

こくん、とちいさな音が響いて、二人の距離がゆっくり開いて。
シエルは紅茶色の瞳と視線が合うと、幾分恥ずかしそうにすっと俯いた。
昨夜は散々乱れたというのにキスひとつで恥らうその様子が可愛らしくて、
セバスチャンの顔がふわりと笑顔になる。

「ふふ、昨日と逆ですね」
「おまえが、たくさんするから…」
「はい、申し訳ありません、つい夢中になってしまって…。お加減は如何ですか?」
「腰も喉も痛い」
「無理をさせてしまいましたね…今日は予定を全てキャンセル致しましたので、ごゆっくりお休みください」
「……おまえの、具合は」
「え」
「怪我は、治ったのか?傷跡は…?」

一旦逸らした視線を今度はしっかり合わせて、執事の燕尾服をきゅっと握って、
心配そうに問いかけられるその言葉。自分だけが見ることのできる
大きな瞳の蒼と紫のコントラストを愛しく思いながら、悪魔はゆっくり言葉を紡ぐ。

「はい、言ったでしょう?貴方の愛で治りました。」
「…ばか」
「貴方の体力が戻るまで誠心誠意お世話させていただきます、マイロード」

揺れる瞳に誘われるままベッドに入り、ゆるく開いたくちびるに強請られるままキスを与えて。
ちいさな身体で悪魔の欲を全て受け止めたシエルの体力が戻るまで、
セバスチャンは大事な恋人をこれまでにないくらい甘やかすのだった。




end

改定履歴*
20110628 新規作成

リク内容:自分を助けるために怪我をしたセバスチャンを心配して労る坊っちゃん…
につけこんで色々とイケナイお願いをする狡〜い悪魔/R18(M様)
ありがとうございました!
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