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無防備な主人と執事の日常 -3-

ランチタイムの後、坊ちゃんはヴァイオリンとダンスのレッスンをこなし、
執務室に移動してファントム社のお仕事で書類を捲ってらっしゃいました。
さすが我が主、お勉強にもお仕事にも熱心でいらっしゃる。
そんな坊ちゃんに少しでも癒されていただくためのスイーツ作りにも気合が入るというものです。

お手製のケーキと一級品の紅茶をワゴンに載せて執務室の扉の前にたどり着くと、
懐中時計はちょうどティータイムを指していました。
そのまま扉を開けて中に入れば、坊ちゃんの目線は書類からおやつに移動します。
きらきらと目を輝かせるそのこどもらしい仕草に、私の頬は緩みっぱなしです。
可愛いです。私も坊ちゃんという名のおやつをもぐもぐしたいです。
こんなこと言ったら解雇されるのが目に見えているので、絶対に口には出せませんが。

「セバスチャン」
「はい」
「何考えてるんだ?顔がにやけてるぞ」
「あ、いえいえ、坊ちゃんが気になさるようなことではありませんよ。さぁどうぞ」

危なかったです。坊ちゃんは小悪魔だとは思っていましたが、
まさか私の心の内まで見抜きかける術をお持ちだったとは。さすが我が主。
ですが、すかさず目の前に出されたフルーツの沢山載ったケーキと紅茶に
ころりと興味を奪われて下さるあたり、まだまだお子様です。そんなところも萌えポイントです。

「熱っ」
「坊ちゃん!大丈夫ですか?」
「あっつ…」
「ごめんなさい、熱かったですね」
「セバスチャ、…あつい」

私としたことが、あまりに坊ちゃんに集中しすぎてうっかりしていたのでしょうか。
お出しした紅茶がいつもより熱かったようで、坊ちゃんは慌ててお口からカップを離されました。
その勢いで余計に零れてしまう紅茶が、坊ちゃんの細い指を濡らします。
慌ててハンカチで拭ってみてももう遅くて、坊ちゃんは涙をいっぱいに湛えた瞳で私を見上げ、
舌足らずに私の名を呼ぶのです。




「…舌のやけど、治してあげますから」
「んっ、ぁ、ふ…っ」
「こら…じっとして」
「んぅっ、ぷは、セバス…」

結論から言うと、我慢できませんでした。
きっと坊ちゃんが涙目で私を見上げたのは、指と舌の火傷が痛いだけで
キスを強請ったわけではないのでしょう。けれど朝からずっとお預けを食らわされていた身では、
あのように可愛らしく見上げられては我慢などできない訳で。気がつけば私は、
坊ちゃんの頬に手を添え、ちらりと覗く赤い舌に誘われるままキスをしてしまっていたのです。

舌の火傷なんてもう忘れてしまうくらいにキスを繰り返してお互いの顔が見える位置まで
距離をとってみれば、そこにあったのは、とろんと蕩けた瞳でした。
それが口の端をつたう飲み込みきれなかった唾液と相俟って、しばらくお預けだった情事を思い出させます。

「セバスチャン…?」
「その誘うような視線はわざとやっておいでですか?」
「な、そんなの知らないぞ。急に何を言ってるんだ」

知らないといいながらも私の燕尾服の袖をきゅっと握るちいさな手が、
私をじぃっと見上げてくる瞳が、…坊ちゃんの全てが私を誘っているようにしか思えません。
それでなくても今日は朝から色々と我慢していたのです。
こんな風に名前を呼んで見上げられたら、もう理性など利く筈もないのでした。






改定履歴*
20110603 新規作成
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