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無防備な主人と執事の日常 -2-

私の坊ちゃんは若干13歳ながらも大変に優秀なお方なので、自己管理も完璧です。
来客の無い日の午前中は、ファントム社の経営に関する事など頭を使う難しいお仕事に集中して、
ランチタイムの後の眠くなるお時間にはフェンシングやヴァイオリン等、からだを動かすお勉強。
その後はまぁ、その日によってさまざまですが主に書類整理のお仕事を。

たまに市場調査という名のデート…いえ、まぁ、ふたりでロンドンに赴くこともありますが、
その時は本当に気を遣います。何しろ、街中では坊ちゃんの輝くように愛らしい姿が
どこの馬の骨とも知れない輩の目に晒されるわけですから。
まさに昨日はそういう状態でしたので、お屋敷の中で静かに日常を送れる今日のような日は、
私にとって天国のようなものなのです。坊ちゃん独り占め最高です。

今日は朝から可愛らしい坊ちゃんを堪能できましたし、最高潮に気分のよい私は
腕によりをかけて坊ちゃんのお好きなメニューの数々をずらりと食卓に並べ、
お仕事に集中されているであろう書斎のドアを静かに開けました。

「坊ちゃん、ご昼食の準備ができました」
「ん、もうそんな時間か」
「今日もよく集中されていましたね、さすがは私の坊ちゃんです」
「…褒めてもなにもでないからな」
「はい…、では、ダイニングへ行きましょうか」

くすくす笑いながら両手を差し出してそのからだを抱え上げると、
坊ちゃんはそのまま大人しくからだを預けてくださいました。
こんなふうに何気なく触れ合うことがこんなにも幸せだなんて、私は本当に果報者です。

「セバスチャン、降りる」
「…?もう少しでダイニングですよ?」
「だからだ、使用人たちに見つかるかも…」

けれど長い廊下を抜け、ホールに差し掛かったところで、坊ちゃんから残念な命令が下されました。
私は名残惜しさを振り切って、腕の中の体温を降ろして差し上げたのですが、
この数秒後に心底後悔することになります。

本来ならば執事の私が、先導すべきだったのです。
けれど坊ちゃんは照れ隠しもあったのでしょう、早足で階段を下っていって、
1階に着くまであと2段、というところでした。私を振り向いた坊ちゃんが、バランスを崩したのは。

「セバスチャン、今日のランチは…ぅわ、わぁっ」
「坊ちゃん、危な…」

慌てて手を伸ばしても遅くて、坊ちゃんのからだが躓いた勢いのまま床に落ちてゆくのが
スローモーションのように見えました。かろうじてそのちいさなからだを抱きとめ、
私の腕の中に収めることができたのが不幸中の幸いだったように思います。
床に落ちる直前に、私は自分のからだをクッションにして坊ちゃんを受け止めました。

「――っく」
「痛…く、ない」
「坊ちゃん、お怪我はありませんか」
「だ、大丈夫だ」
「よかった…」
「おまえは、大丈夫なのか」

坊ちゃんのお声を聞いて、そのお体に傷がないことを確認し、ようやく私はほっと一息つきました。
嗚呼本当に、この芸術品のように綺麗なからだに傷がつかなくてよかった。
もしそんなことになっていたら私は、きっと自分を責めても責めきれないでしょう。

「セバスチャン?…どこか、痛いのか?」

安心するあまり返事を忘れていた私のことを不思議に思ったのでしょう、
上体を起こした坊ちゃんは私の顔を覗き込んで、泣きそうな声で心配してくださいました。
嗚呼もう本当にお可愛らしい。天使です…。

それはいいのですが、問題は天使が私に跨ったままだということです。
いや、それ自体はいいのです。いいのですが、場所が駄目です。
もう色々考えるのが面倒なので包み隠さず言うと、いわゆる騎乗位の体勢ではないですか。
下半身に天使のやわらかなおしりの感覚を意識した途端、
私のソコに血が集中するのも仕方ないというものです。

「うわぁセバスチャン、おまえ何考えて…」
「だって坊ちゃんがいけないのです、畏れ多くも貴方の恋人になってから今日まで
 どんなにお願いしても絶対に了承してくださらなかった騎乗位の体勢に急になるから」
「不可抗力だ!」
「この際もう何でもいいです、ねぇ坊ちゃん、このまま挿れちゃダメですか?」
「な、なに言って…うわバカ、脱がそうとするな押し付けんなぁ…っ」
「お願いします、私が動きますから、貴方は受け入れてくれるだけでいいですから」

坊ちゃんの細い腰を掴んで、服越しに固くなったものを擦り付けながら、
空いた片手でハーフパンツのベルトに手を掛けた次の瞬間でした。
文字通り目の前で火花が飛ぶような痛みが、私を襲ったのは。

「――〜っ、とうとう頭が腐ったか、この変態!」
「いっ!痛いです坊ちゃん、ステッキは人を殴るものではありませ…」
「おまえ悪魔なんだからいいだろう」

顔を真っ赤にさせてちいさな手でぎゅっとステッキを握り締めたままの坊ちゃんから
そんな辛辣な言葉を掛けられても、そうか坊ちゃんは天使ではなく小悪魔でしたね間違いました、と
脳内で自己完結した後そんな小悪魔がたまらなく愛しくて抱きしめてしまうくらいには、
私はこの小さなご主人様に夢中です。







改定履歴*
20110531 新規作成
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