top * 1st * karneval * 刀剣 * utapri * BlackButler * OP * memo * Records

悪魔の所有物 -2-

「シエル、送ってくれてありがとう。おやすみなさい」
「…ん、おやすみ、リジー」

初めてのキスはふわりと触れるだけの幼いものだったのに、それでも顔を真っ赤にして
その場から逃げ出そうとする婚約者を引き止めて、彼女のための寝室まで送り届ける。
照れながらも嬉しそうにおやすみの挨拶をする彼女の頬はほんのりと桃色に染まっており、
シエルは安堵感と罪悪感でいっぱいになってしまった。

『僕はリジーのことが好きだ』『おまえに泣かれるのがいちばんつらい』

――半分本当で、のこり半分は嘘。
だって僕には、もう何年も前から最愛の恋人がいるのだから。
僕はセバスチャンと一緒にもう戻れないところへ堕ちてから、
こころもからだも魂も、すべてあの悪魔のもの。
あいつ以外が『いちばん』になることは…残念ながら、あり得ない。

まだ夜会が開催されているであろう広間へと向かう途中、
シエルは揺れる燭台の灯りを見ながらぼんやりとそんなことを考える。
自分の狡さに嫌気がさして、はぁ、と思わずため息が漏れた。




「おや、おかえりなさいませ」
「僕が席を外している間、問題はなかったか?」
「いえ、何も」
「そうか、ご苦労だった」

広間まであと数メートルというところで鉢合わせたのは、今の今まで頭の中にいた相手だった。
手には未開封のワインボトルを持っているから、きっと客人の好みに合わせて選んできたものだろう。
シエルが居ない間も滞りなく夜会の席をおさめてしまうとは、悪魔の癖によくできた執事だ。
労いの言葉をかけてみれば、セバスチャンはにこりと綺麗な笑みを浮かべてシエルの手をとり、
無言のまま近くにあるちいさなキッチンへと歩を進めた。

「…?なんだ、セバスチャン」
「坊ちゃん、…あまいにおいが、致しますね」
「ばか、何をしてるんだ」
「貴方こそ何をなさっていたのです?お口についているの、これ、口紅ですよね」

ワインボトルをテーブルへと置いた執事は、そのまま右手でシエルの頬へと触れた。
空いた左手を細腰へ回してぐっと抱き寄せ、いきなりこんなところへ連れてこられて
訳がわからないというように戸惑っているシエルの唇を、親指でそっと拭うのだ。
真っ白な手袋はエリザベスの付けていた口紅でうっすらと赤く染まり、
悪魔は面白くなさそうにそれを咥えて脱ぎ捨てる。

「夜会の席とはいえ、貴方のからだから他の女の香りがするなんて面白くありません。
 私が嫉妬でお相手によからぬことをしてしまう前に、上書きさせてください」
「!!待て、こんなところで…、ぁ!」
「しぃっ、時刻もそろそろ12時を回ろうかとしています、お部屋へ戻るお客様もいらっしゃるでしょう。
 大きな声を出しては、不審に思ったお客様がこちらへいらっしゃるかも。
 …私に犯されている姿をお客様方に見られるのが嫌なら、声、我慢してくださいね?」

恐ろしく綺麗な笑顔を貼り付けたままの悪魔は、優しい声でシエルを追い詰める言葉を
口にしながら壁際にそのうすいからだを押し付けた。






改定履歴*
20110524 新規作成
- 2/4 -
[] | []



←main
←INDEX

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -