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SecretRoom -1-

僕の名前はシエル・ファントムハイヴ。
今日は僕の変態執事についてちょっとした話をしようと思う。


セバスチャンが僕に仕えるようになって丸2年が過ぎた。
つまり、あいつが僕の屋敷に住むようになってから丸2年。
当然屋敷内には、あいつ専用の部屋がある。
執事という立場上、それなりに上等の部屋だ。
だが僕はその部屋を訪ねたことは二度しかない。

その理由は、あいつは執事で僕は主人だから、用があるときは
わざわざ僕が行かなくても呼び鈴を鳴らせば飛んで来る…というか、
呼ばなくてもいつの間にか僕の傍に控えている。常に。

純粋だった僕は、それを、あいつが有能だからだと思いこんでいた。
でも、それは僕のしあわせな勘違いだったんだ。






いつだったか、あいつに出会ってまだ間もない頃、
夢見が悪くて夜中に目が覚めたことがある。
風の音もしない、新月の夜だった。

どうにか寝付こうと目を瞑れば、そこに広がるのは完全な闇。
しんとした広い寝室で聞こえるのは静かに時を刻む時計の音だけで、
程なくして僕は、広い屋敷に自分ひとりしかいないような錯覚に襲われた。


『私は悪魔ですから、睡眠は必要ないんですよ』


そう言ってにこりと笑う執事の顔が思い出される。
そうだ、あいつなら起きてるに違いない。
そう思った僕は、はじめてあいつの部屋に足を向けたんだ。

廊下にぺたぺたと響く自分の足音がやけに寂しく響いて、
僕は自然と早足になった。

早く、はやくあいつの部屋へ。
灯りのついた暖かいあいつの部屋にさえ着けば、
きっとあの笑顔で、『坊ちゃん、どうしたんですか』と迎えてくれる。

それだけを信じて、ようやく足元が見えるくらいの暗闇のなか
一生懸命にあいつの部屋へと向かったんだ。


(もし今、あの場に戻れるならば。
必死でセバスチャンの部屋に向かう僕の肩をぽんと叩いて無言で首を振ってやりたい。)


「(…たしか、この部屋だったはず)」

あいつの部屋まではそう距離はないんだが、
なにぶんまだ子供だった僕にとっては遠く感じた。
ようやくたどり着いた部屋の前、扉に手をかける。
ほんの少し隙間が開いて、室内から漏れる光に安心した僕は
『セバスチャン』と名前を呼ぼうとした瞬間、
部屋の中からなにやら聞こえてくる声に硬直してしまった。

「――ん、擽ったいですよ」
「そんなに舐めてはいけません」
「嗚呼もう…本当にあなたは可愛らしいですね」

!!!??
なんだ、何がおきているんだこの部屋の中で!?
この屋敷にいるのは、僕とヤツと、タナカとバルドとフィニ、それから…


……

………メイリン?

僕は、その予想もしていなかった事態のあまりの衝撃に、
ドアノブに手をかけたまま名前を呼ぶことも
その場から動くこともできずしばらく突っ立っていた。
そうしている間にもあいつの腑抜けた声はどんどんと聞こえてきて、
聴いているこっちが恥ずかしくなるようなあまったるい声まで聞こえてくる。

「…このやわらかなからだ、たまりません。たべちゃいたいくらいです」
「みゃぁん」
「さぁほら、ふにふにさせてくださいふにふに。もっとおなかを見せて」

ああもうだめだ、相手の声まで聞こえてきた。
僕は、なんだか一気に疲れてしまって、自室へ戻ろうとしたそのとき――

「あっだめですよ、外に行ってはいけません」

焦ったような声と共に、こっちに向かってくる足音が聞こえた。
まずい、こんな立ち聞きみたいなことしてたなんてあいつに知れたら!
でもどうしよう足が動かない、なんて思っていたら。

「まちなさい、シエル!!」

がちゃりとドアが開いて、僕の目に飛び込んできたのは、
一匹の黒猫と、燕尾服を脱ぎシャツのボタンが3つ程外れ、
鼻血でも出していそうなくらいににやけた顔をした執事の姿だった。







何でシャツが肌蹴ているのか、何で顔がにやけているのか、
なぜ猫に僕の名前をつけているのか。
というか、僕の名前をつけた猫と何をやっていたのか。
そしてあの声は一体……


いや、…やっぱり、僕は何も知りたくない。


これが、あいつの部屋に2度訪れたことのあるうちの1度目。
これ以降、僕はいくら夜寝付けなくとも
あいつの部屋に向かうという選択肢を思い浮かべる事はなかった。

多分、信じたくないけど、うちの執事は変態だ。






更新履歴*
20110201 新規作成
つづく…?
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