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お前には教えてあげない

耳元でおれを呼ぶキャスケットの声が、脳に直接響く。
膝の裏に手を当てられて、抱えられて揺さぶられて。
気が遠くなるほどの快感の中、ゆらめく視界に映るのは、おいしそうな 肩。

だからおれは、そこに歯を付き立てるんだ。



****

「―――〜〜っ!」
「…っは、せんちょ…」

船長室のベッドの上、ほぼ同時に絶頂を迎えたふたりは、心地よい脱力感に包まれていた。
くたりと力の抜けたローのからだをぎりぎり避けて隣に倒れこんだキャスケットは、
呼吸の整わないままの恋人の額に滲んだ汗を拭って、そこへひとつ、キスを落とす。

「ん…、キャス」
「船長、顔、まっか…。かわいい」

ローは、その言葉に一瞬だけ眉間に皺をよせて目線を逸らすが、
それが照れ隠しだということを知っているキャスケットは、
ローの中に留まったままの自身を少しだけ揺らして、
彼の首筋に残る自分が付けた赤い跡を愛しそうに指でなぞった。

「ぁ…、っん、擽ったい、やめろって」

ほんの少しの愛撫にも敏感に反応するローのことが愛しくて、微かな拒否の言葉は唇で塞いだ。
途端に絡まってくる舌にまた、自身のモノが質量を増すのが解る。

「あーあ、船長がエロいキスするから」
「なんだよ、2回じゃ足りねぇのか」
「全然足りない。船長のせいだよ、こんな真っ赤な顔して舌とか絡めるのが悪い」

キャスケットの右手が、ローの頬を包む。
瞼に触れて、皮膚の薄い目の淵をなぞった親指は、そのままローの口のなかに滑りこんだ。
条件反射だろうか、ローの温かな舌はそれに擽るように触れ、吸うように包み込む。
緩急をつけたその動きは、セックスの直前の口淫を思い出させた。

下の口では自分のモノを咥えこんだまま、射精の余韻が残る蕩けきった目線で、
うっとりと親指を舐めるローの表情はこれ以上ないほど扇情的なもので――
キャスケットが思わずそれにじっと見惚れていると、ローは、かぷりとその親指を噛んだ。

その緩い痛みに我に返ったキャスケットは、相変わらず指を咥えたまま笑うローの妖艶な笑顔に
自分の中のある感情が再燃するのがわかった。
それは多分、何度抱いても消えることのない、欲情。

「…ね、船長、おれってそんなに美味しい?」
「んー…?」
「いっつも噛むでしょ。ヤってるときに。それとも、無意識?」
「なんでだと思う?」
「あ、わかった。声我慢してんだ?」

行為の際にキャスケットを噛むのは、ローの癖だった。
首筋、肩、腕、指。からだ中の、至る所に噛みつく癖。
翌日になっても引かないくらいの色濃い跡は、既に今日も片手では足りない数になっていた。

愛しい恋人が情事の際に残す跡。嬉しい反面、少し気になるのも正直なところ。
と言うのも、着替えや風呂の際によく一緒になるペンギンが、
言葉には出さないものの呆れているのが解るのだ。
もっとも、キャスケットだってローのからだにいくつものキスマークを残しているからお互い様なのだが。


「どうだろな?」

ローは、咥えていた親指を離してにやりと笑うと、目線を合わせたままキャスケットの肩を引き寄せた。
そのまま耳たぶに噛み付き、舌でぺろりと舐め上ると、繋がったままの腰を揺らして耳元で囁く。

「なぁ、もう一回。…早く」
「話の途中なのに。ほんっと、船長ってワガママ」
「お前のが大きいままだから欲情すんだろ、――っぁ!」
「船長、キモチいい?今度は、声、いっぱい聴かせてね?」
「んぅ、あっ、あ、…!」

自分からねだったとはいえ、性急に事を進めるキャスケットから与えられる快感は
イったばかりの体には辛いほどで、意図せずに漏れる声が、ローの羞恥を煽る。
指を絡めて唇を塞がれて、浅いところと深いところを不規則に突かれて。
普段は可愛い部下である彼に、散々乱されて啼かされる自分がとても恥ずかしいから。


――いろんなところを噛むのは、そのささやかな仕返しだなんて、本人にはとても言えない。







改定履歴*
20100415 新規作成
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