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真冬の星空

しん、と張り詰めた澄んだ空気。
頬を刺すように冷たい風が吹いているというのに、
ローはベッドに座ったまま、隣にある窓を開け放し、夜空をじっと見ていた。

真冬の夜空には驚く程の星が輝いていて、
ローは、それを見るのが好きだった。
自分に向かって降ってくるようなたくさんの煌きは、
手を伸ばせば届きそうな錯覚すら覚えるのに―――
けして届かないそのもどかしさが、いつしか憧れに変わった。

小さな頃からずっと変わらず、そこにあるもの。
それは何年経っても、たとえ自分が死んでしまっても、ずっとずっと変わらず輝き続けるのだろう。
そんなことを考えていると、あっと言う間に時間が経ってしまう。


「船長、風邪引きますよ?」

不意にそう声を掛けたのは、船長室に備え付けられている浴室で
先程終わったばかりのセックスの汗を流してきたキャスケットだった。
ローも一緒に入っていたのだが、体温の低めなローにとってはのぼせそうなくらいの
温度だったので、一足先に部屋に戻っていたのだ。

「ほら、せっかくお風呂はいったのに、指先冷たい。またあっためなきゃ」
「これくらいなんともねぇよ」
「ダメです、じっとしてて」

言いながらキャスケットはローの背中を抱え込むように後ろに座ると
二人の体を毛布で覆い、その冷えた指先を自分の両手でそっと包む。
自分と同じ石鹸の香りのする体はとても暖かく、
ローはそのあまりの心地よさに、思わず目を瞑ってその腕に体を預けた。
こんな素直な行動はめずらしいもので、キャスケットは目を丸くする。

「どうしたの、船長?」
「…オマエが暖めてくれるって言ったんだろ」
「はい」
「だからじっとしてんの」
「…はい」

腕の中には、安心しきった様子で体重を預けてくるローの姿。
気紛れな猫のような、愛しい愛しい、この存在。
思わずぎゅっと抱き締めると、しばらくの間の後、振り向いたローにキスされた。
ゆっくりと唇を離すと瞳を見ながら一言、呟く。

「…お前のこと、好きかも」

それは、不意打ちの告白だった。
何の心の準備もしていなかったキャスケットは、一瞬言葉の意味が理解できず
ただ、信じられないといった表情でローを見つめていたが、
それが現実のことだと解ると先程までの包み込むような雰囲気はどこへやら、
すっかりいつもの調子に戻ってローへ必死のおねがいをする。

「っ、せんちょ、もっかい言ってください!」
「もう言わねぇ」
「お願い!!!!」
「ダメ」

夏生まれのキャスケットは、正直言って冬が嫌いだった。
なのに、今は、この寒さがずっと続けばいいとさえ願ってしまう。
――この人が、初めて、自分に心を許してくれた季節だから。

ふたりは幸せそうに戯れながら、またどちらからともなくベッドへと身を沈めるのだった。






改定履歴*
20091008 新規作成
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