Happy Valentine's Day! -5-
「上手にできましたね、シエル」
ちゅ、ちゅ、と額に落とされる唇の感覚にゆっくりと瞼を開けてみれば、
シエルの目に映ったのは、すこし眉をよせ苦しそうな笑顔を作っている執事の表情だった。
いつもは涼しげな表情しか見せない完全無欠の執事が見せる、素の表情。
慣れない体位で緊張しているシエルのきつい締め付けによる快感のせいだろう、
額にはうっすらと汗が浮かんでいて――…シエルはそれを、『嬉しい』と思ったのだ。
嬉しい、うれしい。僕だって、セバスチャンを気持ちよくさせることができるんだ。
シエルはそれまでの痛みも恥ずかしさも忘れ、嬉しそうな表情で目の前の首筋に頬をすり寄せた。
セバスチャンはまるで猫をあやすようにその頬を撫でて、目線を合わせる。
「貴方がご機嫌で、私も嬉しいです」
「…ん、ちゃんとできただろう?」
「はい。全部、入っていますよ。ほら」
「え…、え、あ、やぁっ」
小さな手を結合部に導いて触らせると、シエルはまた自分の胸元へと顔を埋めてしまった。
その細い顎へ手を添えて上を向かせ、やわらかな唇を塞ぐ。上顎の裏をなぞって舌を絡めて、甘噛みして。
恋人が深い口付けに酔っている間に、そのほっそり伸びた脚を抱え上げて
自分の肩へと担ぐと、ゆっくりと律動を開始した。
深く刺さった性器がシエルの気持ちいいところをぐいぐいと刺激して、
快感に不慣れな幼いからだをあっという間に追い詰めてゆく。
「あ、…あっあっ、ぁ!」
可愛らしい鈴の音のような喘ぎ声が絶え間なく零れる唇からは
飲み込みきれない唾液がつぅっと零れていて、それが余計にセバスチャンの欲を煽った。
「嗚呼…私は貴方の声以上に心地よい音を聴いたことがありません」
「ひあ、んっ!」
「もっと聴かせてください、シエル」
ゆるゆると腰を揺らしながら名を呼んでみれば、
それまでうっとりと閉じられていた瞼がゆっくりと開いて、
深い蒼の左の瞳といつもは隠されている紫色の右の瞳がこちらを見る。
とろりと蕩けたような視線で見つめられると、どうしようもなく愛しくなる。
その気持ちが伝わったのだろうか、シエルはふにゃりと笑って言葉を紡いだ。
「んっ、ぁ、ん、セバスチャン、セバスチャン…」
「――っ、はい…どうされましたか?」
「…すき、すきだ。僕はおまえのことが、すき…」
喘ぎながらもそんな可愛いことを言う恋人の姿に、どくんと心臓が高鳴る。
これ以上ないくらいに深く繋がっているのに、もっともっと深いところで繋がりたくて。
いっそふたりの熱で溶けていってしまったあのチョコレートのように、
このちいさな恋人と溶けてまざりあってしまえればいいのに、
なんてらしくない事を思いながら深く深く突き上げた。
「ひゃ、ぁ、あっ!やっ、だめ、いっちゃ…!だめ、やぁあっ」
突然与えられた強い律動に慌てたのだろう、シエルは
きゅうっと後ろを締め付けてぽろぽろと涙を零して高い喘ぎ声をあげる。
セバスチャンが衝動に任せてその狭い内側に欲を吐き出すのと、
シエルが自分の精液で白い腹を汚すのは同時だった。
改定履歴*
20110213 新規作成
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