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仲直り

ケンカの原因は、いつも些細な事。
それでも、一度こじれてしまったら仲直りするのは難しい。
お互い船長でオレ様性格だと、なおのこと。



キッドとローがケンカをしてから二日目。

ローの船では、明らかに雰囲気の違う船長にあらかたの船員が気付いていた。
見るからに不機嫌である。
何が気に入らないのか、何があったのか直接聞く勇気のある者などおらず、
全ての質問は副船長であるペンギンに集中する。
尤も、質問の答えはペンギン自身が知りたい程で、船員達の疑問が解けることはなかったのだが。
正直、ローが敵船の船長と馴れ合うことを良く思ってはいなかったが、
こんなことなら早く仲直りしてきて欲しい。


日が西の水平線に落ち、暫く経った後。
甲板で涼しい風に吹かれていたローは、とりあえず会いに行こう、とやっと決心した。
自己嫌悪にも飽きた。それに、あんな小さなことくらい
もしかしたら、ユースタス屋はなんとも思っていないのかも。

そう決めると、今度はペンギンに気付かれないようにそっと船を降りた。
今夜は戻る予定はないから、気付かせてしまえばきっと朝まで眠れず待つだろう。
そう、気遣ってのことだった。
しかし、そんなことはお見通しのペンギンは、船室の窓から
頼むから仲直りして機嫌よく帰ってきてくれとそっと背中を見送るのだった。



****
いつもの宿のいつもの部屋の前。
柄にもなく緊張したローはドアノブに手を掛け、深く深呼吸した。
――― 大丈夫。いつもみたいに普通に開ければあいつもいつもみたいに接してくれる筈。
そうしていた時間は、一瞬だったような気もするし、長かったような気もする。

思い切って、ガチャ、とドアを開けて一瞬、自分の目を疑う。部屋には誰も居なかった。
いつもそこに居るはずの男がいない。
ただそれだけのことなのに、ローは急に不安になる。
――― 嘘だろ、ケンカしたからもうここには来ない、とか…?
悪い予想ばかりが頭を巡り、唇から漏れた声は、すこし震えていた。

「ユースタス屋…?」

次の瞬間、かすかに背後から噛み殺したような笑い声が聞こえた。
聞きなれたこの低い声、これは……

「よう、トラファルガー、なんか用か?」

慌てて背後を振り向くと、にやにやと笑いながら自分を見る男の姿があった。
まさか、いつから見られていたのか。
いつもならこんな失態、絶対にないのに!

予想外の事態にすっかりうろたえてしまい、一気に顔が赤くなったローとは反対に、
キッドはゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。
その余裕は殺意すら芽生える程。

「…っうっせぇ!!オマエに用なんかねーよ!!」
「はいはい。おれに言いたいことがあるならどーぞ。今のうちだぞ。」

キッドはそのいつもの憎まれ口をさらりと聞き流すと、
当然のようにローを腕の中に入れて部屋のドアを閉じるのだった。





end

改定履歴*
20090820 新規作成
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