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素直じゃない

もしかしたら途中で戻ってくるかもしれない。



キッドは、そんな万に一つもありえないような可能性を脳裏から消しきれず、
結局朝方まで眠ることができなかった。

何かあったのかも…そんな心配をするなんて、全くどうかしている。
相手は女子供ではない、れっきとした一海賊団の船長だ。
そんなことは解っていたが、気になってしまうのはどうしようもない。

ローの性格なら、あんな言い方すれば怒って出て行くのは目に見えていた。
だからいつもはうまく言葉を選んでいたのに、失敗した。
そう思う反面、アレくらいで出て行くなんて変だし、
大体アイツが初めっから大人しく泊まってけばこんなことにならなかったんだと思う自分もいる。

――― とにかく謝るか。
つーか、アイツから謝るなんてこと絶対にないから
おれから折れるしかねぇ。
っつっても、なんて言えば。命令口調でゴメン、とか?冗談じゃねっつーの…。

色々な考えが頭の中でぐるぐると回ってしまい、すっかり疲弊したキッドは
こんなことなら昨夜飛び出していったローをさっさと追いかけて捕まえておけばよかった、
と今更ながらに思った。



****
一方、船までひとりで歩く途中、ローはすっかり落ち着きを取り戻し、
なんでこんなことになったのかと考えを巡らしていた。
仲違いをする直前までは、楽しかったのに。幸せだったのに。
急になんだアイツ。突然怒らなくても、というか、なんか怒らせることしたか?

答えは出ないうちに船に着き、水のボトルを取ろうとキッチンのドアを開けると、
そこには予想通りペンギンの姿があった。

「まだ寝ねェのか?」

ローは自分のことを棚に上げ、そ知らぬ振りで声を掛ける。
ペンギンは、かたん、と椅子から立ち上がるとすれ違いざま、頭にぽんと手を置き
あまり遅くになるな、心配するだろう と言ってキッチンを出た。

「…悪ィ」

呟いた言葉は、相手には届かない。
心配、掛けてたのか。

キッドが怒る前、泊まっていけと言った理由も大方同じだろう。
そのことに気付いたローは、素直に悪いことをしたと思った。
何もあんな言い方しなくてもよかったかもしれない。
命令口調についカッとなってしまったが―――
あれは、悪い癖だ。

ローもまた、どうやって謝ろうか、そのことが頭から離れず
夜明けまで一人ソファに身を沈めて過ごすのだった。



****
長い夜が明けても、太陽が中天に差し掛かっても、眩しいほどの西日が船を照らしても。

キッドとローは、お互いに逢いにいくことはしなかった。
なんとなく、二人とも自分から折れるのには抵抗があった。


「「ほんっと、我ながら素直じゃねェ!」」





end

改定履歴*
20090819 新規作成
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