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コート

ユースタス屋の魅力?



鍛え抜かれた男らしい体つき。
赤いふわふわの髪。
吸い込まれる赤い瞳。
低い心地よい声。
俺様なところ。
――― そして、あの、赤のふわふわの毛皮のコート。

うだるような暑さの中、あまりにも暇だったローは
自問自答していた。

やべ、暑さでやられたかな?
思わずそう自分に突っ込みを入れるほど暇である。

「よし」

ローは不意に掛け声つきで立ち上がると、
そのまま船を降りた。
行き先は勿論、あの男の所。


この島にいる間は、この宿にいるから。
先日逢った時、キッドはそう言っていた。
目当ての宿にたどり着き、目的のドアを勢いよくあけると、
そこは冷蔵庫かと思うほど涼しかった。

「さ、寒っ!」
「…おう、トラファルガー」

キッドは突然の来訪者に一瞬鋭い目線を向けたが、
相手がローだとわかるといつもどおり名を呼んだ。
見れば、キッドはこの暑さだというのに
律儀に赤の毛皮のコートを肩にかけ、ソファで寛いでいた。

「オマエ、暑くねーの?」
「だから部屋冷やしてんだろ。」

呆れて物も言えない。
まさか、コートのためだけに宿にいるのか?
返ってくる返事が容易に想像できたので、
言いかけた言葉は寸でのところで飲み込んだ。
まあいい。どうせこの暑さには辟易していたところだ。

「とりあえず座れば?」

言いながら、キッドがソファの奥にずれ、手招きする。
空いたスペースは、一人分ではなく、ソファに横たわるキッドの前半分。
ローがめずらしく大人しくそこに収まると、当然のようにキッドの手はローの腰に回ってきた。

「お前まじで熱いんだけど。熱あんじゃね?」
「外はこんくらい暑いんだよ…」
「そうか?お前、あれだろ。"ノースブルー"出身だから暑さに慣れてねェんじゃねーの」

ずっとここに居れば?
その後に続く言葉も容易に想像できた。
この男は最近特に甘い。
おおよそ見た目からは想像できないような台詞が得意のようだ。
ローはそう思いながらも、その甘さが癖になっている自分にも気付いていた。

自分の気持ちを隠すことなく正直に口にするキッド。
対象的に、ローは言おう言おうと思っても出てくるのは皮肉ばかり。
そのたびキッドは、お見通しのように少しだけ笑って応えてくれるのだが、
これではいつ飽きられてもおかしくない。ローは真剣にそう思っていた。
実際にはその心配は無用なもので、
キッドはローのそんな性格もすべて愛しいと思っていたのだが。

そんなことを悶々と考えながら意を決して半身を返し、
言葉で甘える代わりにキッドに抱きつくと、その後ろの赤いコートが目に入った。


ああ、早く、冬になればいい。そうしたら、寒さを口実にしてこのコートへ潜り込めるから。





end

改定履歴*
20090817 新規作成
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