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I think of U -2-

空から落ちてくる大きな雨粒が、乾いたアスファルトを潤していく。
先程まで青く晴れ渡っていた空は、気付けば夏らしい入道雲に覆われていた。

「…っ、はぁ」
「いきなり降ってくるとはなー。タイミング悪ぃ」
「もー疲れた、ていうか、服ぐしゃぐしゃだ」

学校帰りにコンビニでアイスを食っていたトラファルガーとおれは、
急激に変わる空の様子に慌ててそこから近いおれの家に向かった。
ほんの2,3分程度の道のりだったが、夕立らしい思い切った雨は全身を見事にズブ濡れにしてくれた。
濡れたシャツが肌に張り付いて気持ち悪い。

「服乾かしてけば?」
「んー…」
「風邪引くぞ」
「ん、そうする。ありがとう」

トラファルガーの家はここからまだ少し距離がある。雨脚はひどくなるばかりだし、
こんな時に無理に帰ることもないだろ。
そう思ったおれは、何の気なしにこいつを引き止めた。

とりあえずこの気持ち悪さを一刻も早くどうにかしたくて、
おれは家に上がるなり風呂場に向かいながら服を脱ぐ。
バスタオルを持って戻ってくると、廊下に突っ立ったままのトラファルガーにそれを放り投げた。

「わっ」

途端に妙な声をあげるそいつの目線を追うと、…おれの、腹筋?
一瞬の間の後にそれはぱっと逸らされたが、その顔は面白いくらい赤くなっていた。

「…なんか期待してんの?」
「!!!!!ちちちちがう!そんなんじゃない!!!!」

からかうつもりの冗談は効果てきめんだったようで、
壊れたおもちゃのようにぶんぶんと首を振る仕草が可愛らしい。
でもここで笑うと後々めんどくさそうだから、おれは必死に我慢した。

「くく、シャワー浴びてこいよ」
「ユースタス屋の後でいい」
「いいから。ホラ着替え」
「でも」
「なんだよ、そしたら一緒に入るか?」
「――入ってくるっ!!」

反応、面白すぎだろ、アイツ。もう笑いをかみ殺すのも限界だったおれは、
盛大に笑いながらコーヒーを入れるためにキッチンに向かった。



****
入れ違いにシャワーを浴びて部屋に戻ると、
先程用意しておいたおれの服を着たトラファルガーがベッドの脇に座っていた。
あたたかそうな湯気の立つマグカップを持つその両手は長い袖に半分隠れていて、指先が少し見える程度。
よくそれで器用にマグを持てるもんだ、そう思うと自然に笑顔になる。

「なんだ、そんなちっちゃかったっけ、おまえ」
「おまえがでかいんだろ」
「はは、そっか。あれ、下は?」
「―〜〜、でかすぎて穿けねぇ」

隣に座って気付いたが、トラファルガーは薄手のニットだけを着ていた。
元々ゆったりした格好が好きなおれの服は、コイツには大きすぎたようだ。
腿のあたりまでぎりぎり隠れてはいるものの、そのニットからすらりと伸びた白い脚は
風呂のせいでほんのりと色づいていて、それを認めた瞬間顔が赤くなるのが解る。

どくん、どくん
心臓の音がやけに大きく耳に響く。

あれ、なんかおかしい。なんだこの気持ち。可愛いとか、思ってしまった。
トラファルガーは男だぞ。確かにおれよりも随分線が細くて、
そこらの女よりもよっぽど整った顔立ち、でもれっきとした男だ。

仲良くなってから、他愛もないイタズラを仕掛けてくるこいつをカワイイと思ったことはある。
でも今の『可愛い』は、それとは違う種類のもののような気がして…
それを認めてしまったらおれはどうなるんだろう。
今までどおり『友達』としてこいつの傍に、居れるんだろうか。


「…ユースタス、屋…?」

おれの名を呼ぶ頼りない声に誘われるようにして、綺麗な深い藍の髪に手を伸ばした。
途端に、ぴくんと震えるトラファルガーのからだ。
自分のものとは随分違う、薄い肩からするりとニットが滑り落ちた。

みるみるうちに赤くなっていくトラファルガーの顔がゆっくりと近づいてくる。
違う、おれが近づいていっているのか。
触り心地のいい髪に触れていた手が、勝手に後頭部へと移動する。

おれの赤と、トラファルガーの藍。
交わった目線が逸らされることはなく、吐息が触れるくらいの距離まで近づく。
それでもまだ、近づいていく自分を止められない。

おれは、なにをしようとしてるんだ――



「う、わっ!!!!」

妙な緊張感と沈黙を破ったのは、ごく近くで響く雷鳴と
トラファルガーの驚いたような悲鳴だった。
あと数センチまで縮まっていた距離は一気にゼロになる。
とは言っても、トラファルガーがおれの胸元に飛び込んできたからだったが。

「…ぷは、なんだよおまえ。雷なんて怖えーのか?」
「うるさい、怖くなんか、――わっ」
「ガキみてぇ」
「バカにすんな!」

かたかた小刻みに震えるその体は、いつもより小さく見える。
真下から見上げる仕草はとても可愛らしいもので、…なんというか、庇護欲が満たされた。
弟が居ればこんな感じだろうか。

先程までの妙な感情はきっと、こういうことだったんだ。
そう思い込んで、小さなため息をひとつ。
片手はトラファルガーの背に置いたまま、温くなってしまったコーヒーに手をのばした。

窓の外は雨。間もなくこの雷雲が雨を連れて遠くの空へ行くだろう。
それまでもう少しの間だけ、このカワイイ生き物と一緒に居れそうだ。

――なんていったら、コイツはまた顔を真っ赤にして怒るんだろうな。






改定履歴*
20100430 新規作成
霧ちゃんの学パロ設定お借りしましたv
今回はキッド目線です。ローたんの風呂上がりはやばいくらいかわいいですよね!キッドの大きな服きて、萌え袖なってるの、絶対かわいいですよね…!!
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