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I think of U -1-

ずっとずっと、好きだったんだ。
だから、2年になっておまえと一緒のクラスになれた時は、本当に夢かと思った。

まだおれの片想いだけど、それでも、おれの頭の中はいつでも、おまえのことでいっぱい。


****
昼休みになると、おれは決まって斜め前のユースタス屋の席の前に行く。
机の上にはコンビニ袋と、見るからに甘ったるそうなパッケージの飲み物。
それを当然のように手に取るおれを、「またかお前か」という顔で見上げる
ユースタス屋をからかうのがおれの日課だ。

「いちごオレ?おまえまたこんなモン飲んでんの?」
「何だよトラファルガー、返せ」
「やだね」
「あ、ちょっと待て、おい…っ」

待てっていう声は聞こえない振りをして教室を飛び出し、
そのまま人ごみをすり抜けるように廊下を走って、屋上への階段を一気に駆け上がる。
うしろから追いかけてくるユースタス屋の声と足音が、
どんどん近づいてくるのを感じながら、おれはいつだって全力で走るんだ。

まって、まって。おれの好きな場所に、もうすぐ着くから。




「っは、疲れたー!おまえ、足はえーのな」

ぎりぎり追いつかれる前に屋上の扉を開けた途端にへろへろになって壁にもたれて座り込むおれを、
ユースタス屋が余裕の表情で見下ろす。これも毎日のことだ。
その得意げな表情、ムカつくけどやっぱりかっこいい。

「ったりまえだ。毎日部活で鍛えてんだよ」
「ふふ、知ってる」
「…あ?」
「なんでもない、それより今日天気いーな」

全力で走って熱くなったからだを、暖かな春の陽射しと気持ちいい風がふわりと包む。
穏やかに晴れた空を見上げれば、飛行機雲がひとすじ、真っ直ぐ線を描いたように浮かんでいた。

あまり人の来ないここは、おれのトクベツな場所。
今だってこんな気持ちのいい特等席に、おれとユースタス屋ふたりだけだ。
多分おれは、今すごく笑顔だと思う。けど隠せない。隠す気もない。
だって、ふたりで過ごすこの貴重な時間が、すごく愛しいんだ。

「なんかお前、ガキみてぇに笑うのな」
「いーだろ、べつに。今だけだ」
「わかったわかった、ほらあっちいくぞ」

目の前に差し出された手に掴まると、そのまま力強い腕で立たされた。
ガキみてえ、と笑うこいつの顔をまっすぐ見れない。だってきっと、おれの顔は真っ赤だ。

いつもの場所のフェンスに寄りかかってすわってパンを食うユースタス屋を見て、
おれはぼんやりと入学式の日の朝のことを思い出していた。

ユースタス屋は、その目立ちすぎる髪の色で早速先生に掴まって怒られてた。
しばらくはその説教を大人しく聞いていたこいつが、ついに我慢できず逃げ出した瞬間、
それを偶然見かけて目が離せなくなってたおれに盛大にぶつかったんだ。
あまりの勢いにあっさり座り込んだおれを「わりいっ、大丈夫か!?」って
助け起こしてくれた手がおっきくてあったかくて…おれは、一瞬で恋に落ちたんだ。

あのときはまさか、こんな風に仲良くなれるとは思ってなかったな。
本当に、同じクラスになれてよかった。
そんなことをぼんやり考えていると、不意にユースタス屋の瞳がこっちに向いておれを捉えた。

「おまえ、メシは?」
「え、あ…いらねぇ」
「ちゃんと食わねーと、身長伸びねーぞ」
「!じゃーお前のひとくちよこせ」

黒く塗られた爪の大きな手を引き寄せてパンに齧りつく。
砂糖みたいなのでコーティングされた、特別甘いはちみつ味のパンだった。
甘い、と文句を言おうとして目線を上げて――
おれは、予想外の事態に固まってしまった。

近い近い近い。
ユースタス屋の、赤い綺麗な瞳がまっすぐおれを見ている。
いつもはわからないくらいのユースタス屋の香りにふわりと包まれて、
それを意識した途端に、心臓がどくんとやけに大きな音を立て、鼓動が早くなるのがわかった。

やばい、この音、ユースタス屋に聞こえてんじゃねぇの?


「…おい」
「わっ」
「そこまで驚くことねーだろ。ほらこれやるから。ちゃんと食え」

ユースタス屋にはおれの緊張した気持ちなんかは伝わってないみたいで、
悔しいくらいいつも通りの様子でおれの手をとってそのはちみつ味のパンを持たせてくれた。

「…ありがとう」
「なんか素直すぎて気持ちわりぃな」
「うるせぇ!ばーか!」

あぁまた、おれは憎まれ口しか言えない。可愛くないこんなんじゃ。
ぐるぐるとそんな考えが頭を巡って思わず俯いていると、
ユースタス屋の手が伸びてきておれの髪をさらりと撫でた。

途端にまた、やっと落ち着いていた鼓動が早くなる。もう目線は上げられない。
それをごまかすようにパンに齧りつくと、やっぱりとてつもなく甘かった。
きっとおれは、この甘いパンを食べるたびにユースタス屋を思い出すんだろう。
だけどなんとなく、そんなのも悪くないと思った。


おまえのことで頭がいっぱいで、ふとしたことでおまえのことを思い出す。
――これって、おれがおまえのことを好きな証だろ?






改定履歴*
20100423 新規作成
霧ちゃんの学パロ設定お借りしました。
入学式で一目惚れして、2年になって同じクラスになれて、うれしくてがんばるローたんがめちゃくちゃ可愛くって悶えました…!><
萌えネタありがとうございましたー!!
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