top * 1st * karneval * 刀剣 * utapri * BlackButler * OP * memo * Records

2010新年企画

「ユースタス屋、ユースタス屋!見て、あと1分だぞ!!」
「お、ほんとだ。あとちょっとだな」

大晦日から元旦にかけてもうすぐ日付が変わろうという真夜中に、キッドとローは仲良く神社に来ていた。
神社は、ふたりと同じく新年と同時に参拝しようと集まった人々でごった返していて、
参道がたくさんの店や人で賑わっている様子は、まるで祭のようで気分が華やぐ。
長い長い行列に並んで新年を待つ時間も、今年の思い出話をしていればあっという間で、
肌を刺すような寒さだって、手を繋ぐ為の理由になるし、悪くない。
何より、初めて一緒に迎える新年は特別で、ふたりにとってはそれだけで楽しいものだった。

新年まであと十数秒という頃になると、行列の先頭の方では新年に向けてのカウントダウンが始まる。

「10、9、8、…」

もこもこの帽子やマフラーに埋もれてしまっているような格好のローは、
ただそれだけで可愛らしいのに、その嬉しそうな横顔は見惚れてしまうほどで、
その様子に気をとられていると、ローが不意にこちらを振り向いてにこ、と笑う。
まるで「オマエも!」とねだるような笑顔に負けて、キッドはそのカウントダウンに参加した。

「…、4、3、2、1!」

繋いだままのローの手が嬉しそうに跳ねる。
――ああ、もう、何がそんなに嬉しいんだよ。
ただ、日付が変わるだけなのに、その笑顔。可愛くて抱き締めたくなるから困るんだって。

「「ハッピーニューイヤー!!!」」

その瞬間、くいっとマフラーを引かれ、頬にふわりと触れたローの唇。
こんな人ごみの中で起きた事態に驚くキッドに、今年もよろしくな、と
イタズラっぽく笑いかけるローの表情は幸せそのものだった。



****
「おれ、すっごいたのしかった!」
「はいはい、よかったな」
「だってな?ユースタスやと一緒に年越しそば食べてー、
初詣してー、そんで、大吉だったし、おれ」
「わかってるって、それよりおまえ、酔ってる?」
「酔ってねーよーーー」

神社へと向かう途中、寒さ対策にと参道で買った甘酒。
アルコールの入ってないものかと思ったら、思いっきり入っていたらしく、
すっかり上機嫌になったローは、いつもよりも饒舌になってよく笑う。

「なぁユースタスや?家帰ったら飲み比べ、しよーな!」
「あのな、飲み比べってのはな?酒に強いモン同士がやるもんだぞ?」
「おれ強いし、オマエだって強いだろー」
「どの口がンな事言うんだよ、既に酔ってるだろうが…」

酒に酔ったローが舌足らずな口調で甘えてくるのはいつものことで、
その様子はとても可愛らしくそれはそれで好きなのだが、
元々そこまで強くないのか、次の日決まって二日酔いになり起きれない。
辛そうな姿はあまり見たくないからなんとか窘めようと試みてはみるものの、
ローの左手には帰り道にノリで買った焼酎が握られていて、すっかりその気のようだ。

「これ、旨いんだって。ほんとだって。おれ知ってんだ」
「あーわかったわかった。付き合うから早く帰ろーぜ。風邪ひいちまう」

――とりあえず付き合って適当なとこで寝かしてしまおう。
既に酒が入っていて、こうなったローのわがままはもうどうしようもない。
それを十分というほどに理解しているキッドは、とりあえず風邪だけは引かせないようにと
寒さのせいで冷えたローの手をぎゅっと握って自分のポケットに収め、家へと向かう足を速めるのだった。



****
「ユースタス屋ー遅いぞー!」
「おまえもう出来上がってンじゃねぇか…」

冷えた体を温めるために、先に酔っ払いを風呂に突っ込んで、それから自身も温まって部屋へ戻ると、
既にローは焼酎セットを用意してちゃっかり飲んでいるところだった。

「お湯?水?ロック?」
「んー…じゃ、水で」

キッドの注文を受けたローは嬉しそうに、大きな氷をグラスへ、ひとつ、ふたつと入れていく。
これくらい?と焼酎を注いで混ぜて、続けてミネラルウォーターも注いでゆっくりと混ぜる。
はい、どーぞ。と差し出された水割りは、いつもよりおいしく感じるから不思議なものだ。

「あのな?おれな?初詣行ったの初めてで、おみくじも、はじめてなのに―…」
「おー、大吉だったんだよな。聞いたそれ、3回目だって」
「え?そうだっけ?おれ言った?」
「言った言った。」

いつもならここまで酔うことはないローだが、初めて二人で迎える新年がよほど嬉しかったのだろう。
酒はどんどんと進み、2時間ほど経った頃にはもう耳まで真っ赤で、
もう、酔っているのは誰の目からみても明らかだった。

「おい、もーおまえ、その辺にしとけ」
「んー…やだ、ま、だ 飲める」
「ダメ。明日ツライのおまえだろ。寝るぞ」
「…じゃ、ユースタス屋と寝る。ベッド連れてって」

はいはい、と抱きかかえると甘えるように抱きつく姿。
寒いからと着せたキッドの服はローにはすこし大きくて、指が袖に埋もれている。
髪からふわりと漂う自分と同じシャンプーの甘い香りが嬉しくて、
ベッドに降ろす前にぎゅっと一度抱き締めると、ローはふわりと微笑んで、すき、と言った。

「ん…み、ず」
「ほら」

キッドは、ベッドの上に座り込んだまま甘えるローへ、仕方ねーなと少し笑いながら水を口移す。
飲み込みきれず唇の端から零れた水滴を拭ってやると、ローはその指先をぺろりと舐めた。
ゆっくりと流れるその動作は、やたらと艶やかで―…
思わず見惚れていると、ローの腕はいつのまにかキッドの首に回されていた。

「なあ、姫はじめ、しよ」
「はぁ?おまえ意味解って言ってんの?」
「勿論」
「…気分大丈夫なのかよ」
「してくれたら良くなるかも」

じっと自分を見つめるまっすぐな瞳。上気した頬、耳朶、それから、普段よりも甘い声。
ローの全てが自分を誘っているような、そんな気分だった。
――とんでもないヤツに捉まってしまったもんだ。

「途中で、音上げるんじゃねぇぞ」

キッドはそれだけ言うと、答えは聞かないまま、口付けた。
初めはごく軽いもの。一度だけ目線を合わせて、今度は、深く。
薄い唇を舌で割ると、ローは抱きつく腕に力を込めて舌を絡めてくる。
二人の唾液が混ざり合って、溶け合って、どんどん甘くなっていくような感覚――

キッドは自分の手をぎゅっと握って指先が冷えていないかを確認すると、
そのまま慣れた手つきで服を脱がせて、そのしなやかな体を唇と手のひらで温めていく。
途端にローの唇から漏れるのは、甘い喘ぎ。滲み出た涙が、深い藍の睫毛を濡らす。
腹筋をなぞるように舌を滑らせれば、ローは細い喉を仰け反らせて一層高い声を上げた。

「あっ! はぁ…ぁ、ユースタスや、あ」
「ん?」
「スキ、大好き、おれ…」

返事の代わりにぎゅっと抱き締め、そのまま下腹部に向かって舌を滑らせていく。
早く、と急かすようにキッドの赤い髪をやわらかく掴むローの手が、
細くて綺麗な脚が、乱暴にすれば折れてしまいそうな細い腰までもが
ほんのりと赤く染まっていて、それはひどくキッドの気分を高揚させた。

大きくなったローの先端を舌先で突付いてそのまま咥えこみ、
根元を手でゆっくりと扱くと、太腿がびくんと大げさに震える。
空いた手で後孔を解すようにしながら温かな舌でローのものを丁寧に舐め上げていくと、
ローの口から漏れる、引き攣るような声がどんどん高くなった。

「…っや、もう、イく、も、だめ」
「は?まだ挿れてねぇぞ?」
「あ…、あ!」

舌を離した瞬間に脈打ちながら出てくるローの精液がキッドの指を汚す。
間一髪でそれが顔に掛かることはなかったが、それでもローは羞恥に顔を染めた。
顔を隠そうとする腕をそっと退けて頬へとキスを落とすと、
蕩けたような表情で瞼を閉じてゆっくりと息を吐く。

「…ユースタスや、気持ち、イイ」
「遠慮すんな、折角の姫はじめだしな、もっと気持ちよくしてやるから」
「ふぁ…?――っ!」

キッドは、言いながらローの脚を抱えて腰を前へと突き出し、自身のものを一気に挿入した。
弛緩しきっていたローの入り口は、随分と大きなそれを飲み込み、奥へと誘うように収縮する。

「ひぁ、ぁっ、あ、やっ」
「や、じゃねぇだろ。音上げないって言ったよな?」
「んっぁ、ゆーすたすやぁっ…!」
「…なぁトラファルガー、一度じゃ足りねぇから覚悟しといて。」

律動を繰り返すたびに大きくなっていく嬌声と、先程までうっとりと閉じられていた瞼から零る涙。
そして、背に回された腕には力が篭っていくばかりで、キッドはそれを愛しく思うのだった。



****
結局、キッドがローの体を放したのはそれから数時間経ってからで、
ローはというとセックスの汗のせいで酒なんてすっかり抜けていた。
うつ伏せになってキッドの上半身に寄りかかり、甘えるように声を掛ける。

「なぁユースタス屋、初詣、なに祈ったんだ?」
「え?んー…今年も元気に過ごせますように」
「それだけ?」
「メインはもちろん、お前とずっとこうしていれますように。って」
「…ふうん」
「え、お前は?」
「内緒」
「ちょ、オマエそれはなくね?教えろよ!」
「ヤダ」



『ユースタス屋が、もっとおれに夢中になってくれますように』、だよ

ローは心の中でだけそう言うと、キッドに背を向けて毛布に包まる。
――もちろん、後ろから抱き締めてくれるのを期待して。






end

改定履歴*
20091214 新規作成
20091231 修正
20100115 サイトへ公開
- 1/3 -
[前] | []



←main
←INDEX

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -