contrast
燃えるように赤いキッドの瞳と、深い海の色を宿したローの瞳。
そのふたつはこれ以上ない程に対照的で、だからこそ惹かれあう。
夜明け前のベッドの中、まもなく訪れるサヨナラの時間を前に
ふたりはじっとお互いの瞳に見入っていた。
静かで、甘くて穏やかな、それでいて少し寂しさを含んだ空気が二人を包む。
どちらからともなくキスをする。
数え切れない程交わしたそれに飽きることなどなく、時間さえあればお互いに求め合ってしまう。
まるでそうすることで、会えない時間を埋めるかのように。
「――――――。」
「!」
静寂を破って、ゆっくりと紡がれたキッドの言葉にローは動揺し一気に顔が赤くなる。
なにかを言おうとしているのだろうか、口がぱくぱくと動くが、それは声にならない。
キッドはそんな愛しい恋人を見て少しだけ笑うと、抱き締める腕に力を込めるのだった。
サヨナラまで、あと5分。
****
海賊王になりてェ。
それが、今までおれの生きる意味の全てだった。
どこで生きていても、何をしていてもそのことがおれの真ん中にあって、
その他の事は全部付属品。
船員だってそうだ、あいつらはまあ大事だけど、全ては海賊王になるため。
だけど、お前と会ってから変わったんだよ。
手に入れてきた全てのものや、強くなるための努力だって
今こうやってお前を腕に抱いてる瞬間の為だったんじゃないかと真剣に思ってる。
『お前がおれの全て。』
こんな、普通だったら笑ってしまうようなセリフも、ちゃんとお前の瞳を見ながら言ってるんだから
一度くらい「おれも」って言ってくれてもよくねぇ?
まあ、声に出さなくてもその表情だけで満足って言ったらそうなんだけど。
****
なぁ、ユースタス屋。
おれ、お前が好きだよ。
でもおれは、お前みたいにバカ正直じゃないからあんまり気持ちとか伝えるの上手くない。
だけど、この気持ちだけは知ってて欲しいんだ。
『お前となら、世界で、ふたりきりになったっていいよ。』
――なんて、やっぱり恥ずかしくて口には出せないけど。
end
改定履歴*
20090924 新規作成
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