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名前だけは知っていた。
2億の賞金首、トラファルガー・ロー。



億超えのルーキー達の中でも最高額、3億超えの賞金首のこの男――
ユースタス”キャプテン”・キッド。
見る者に鮮烈な印象を残す、赤。髪も瞳も、キッドのそれは赤だった。

鍛え上げられた肉体と、見るもの全てを威嚇するかのような眼光。
まさに悪魔のような風貌の男には、
手配書に載る自分の懸賞金が上がる度に、祝杯を上げる単純な一面もあった。
部下たちも自分のことのように喜んでくれる。
キッドにとって、この海賊団は仲間以上の、家族のようなものだった。

手配書は、他の海賊のものも纏めて新聞と一緒に届けられる。
キッドの懸賞金が上がる度、必ずと言っていい程同時に懸賞金が上がる男。
それが、トラファルガー・ローだった。

キッドはあまり自ら進んで情報を仕入れるタイプではないが、
船長という立場上、部下が色々と報告してくる。
アイツが暴れた後は悪夢のような光景だとか、バラバラにするのが趣味だとか、
とにかく胸クソ悪くなるような話ばかりだった。
尤も、自身も他人のことをとやかく評価できるほどできた人柄ではないのだが。


"グランドライン"をそれぞれの航路で進んできたルーキー達が、一時期にシャボンティ諸島に集結する。
それは新世界はもちろんシャボンティ諸島にとっても一大事で、情報通を発信源として噂は駆け巡り、
少し頭の回る島民たちは、諍いが起きはしないかと戦々恐々としていた。

一方、キッドはこの島に足を踏み入れるのが楽しみで仕方なかった。
船のコーティング。たしかにそれが第一の目的だ。しかしキッドには別の目的があった。
今までの航海では、どんな強靭な敵でも圧倒的な力で地面にひれ伏させてきた。少しあっけない程に。

ところが、この島に集結するのはいずれも高額の賞金首、もしかしたら、
好敵手となる者に出会えるかもしれない。手配書に載っているのは所詮懸賞金と写真のみ。
噂ではなく、自分で見たものしか信じない。実際に会ってみなければ。





end


改定履歴*
20090807 新規作成
20090813 修正
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