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朝まで一緒に

ひんやりとした手のひらが、そっと頬に触れる優しい感覚。
重たい瞼をやっと開けると、目の前にいたのはキャスケットだった。
ここは確かに自分のベッドで、普段は決して一緒には眠ることをしない筈のキャスケットの
腕枕で寝ているこの状況が理解できないローは、寝起きでぼうっとする頭で必死に記憶を辿る。

――そうだ、おれ久々酔ったんだっけ…

ようやく思い出したその記憶を肯定するかのように、
キャスケットは笑いながら、でも少し心配そうにローに話しかけてきた。

「気分、少しはよくなりました?」
「ん。もう全然平気」
「よかった。今日はもうこのまま、ゆっくり寝てくださいね」
「…おれ、どのくらい寝てた?」
「え、30分くらいかな?おれがここに連れてきたら、自分でそこの薬飲んで、すうっと寝付いてましたよ」

自分の体調をしっかり把握しているローは、普段ここまで酔うことはない。
ただ今日は、クルー達とのクリスマスパーティが楽しくて、つい強い酒をどんどん空けてしまった。
もちろん、ペンギンやキャスケットはそんなローのことを心配して止めようとしたのだが、
そのあまりに楽しそうな笑顔と、「だめ?」という甘えた口調に負けてしまったのだ。

「キャス、ずっと一緒にいてくれたのか?」
「はい、っていうか、船長が離してくれなかったんでしょ?」
「そうだっけ…」
「コドモみたいで可愛かったですけど」

半分本当で、残り半分は嘘。
実のところ、キャスケットは、ローが少し眠っていたこの数十分間というもの、
ベッドの中できゅっと自分に抱きつくローの、酒のせいで紅潮した頬だとか、
うっすらと額や首筋に滲む汗には必死で気付かないフリをしていた。

今だって、自分をじっと見上げるローの目元が赤いのがやけに艶っぽく思えて、
思わずキスしてしまいそうになる衝動を抑えるので精一杯なのだ。
ところが、少し気分の悪さが落ち着いたローは、ずっと腕に抱かれていたのが嬉しかったのか、
キャスケットのそんな気持ちにはお構いなしに唇を重ねてくる。

「ん、船長」
「キャス、…しよ?」

ローの口から紡がれる、甘く誘う言葉。
もちろん抱きたいけど、やはり体調の整わないうちは、身体を休めて欲しい。
そう思ったキャスケットは、一瞬の間の後ローと距離をとろうと試みる。

「船長、ダメだよそんな酔ってるのに…っ、ん」

全ての理性を総動員させてローを諌めようとする努力も空しく、
ローは、煩いとでも言うようにキャスケットの唇を塞ぎ、口内へと舌を進入させてくる。
息継ぎすらも忘れたかのように求められる、そのいつもとは違う感覚が愛しくて気持ちよくて
目を瞑って応えているうちに、唇の端からはどちらのものともわからない唾液が零れた。

「なあ、キャス、はやく」
「っ、でも」
「もう酔い醒めたから、……な?」

キャスケットの手をきゅっと握り、吐息が触れる程の距離で、じっと瞳を見つめて囁く声。
それは、もうぎりぎりのところで保たれていたキャスケットの理性を消し去るには十分すぎる程のもので、
まるでローはそれが解ったかのように、にこりと笑うとまた首筋に顔を埋めて、
ダメ押しのように「好きだ」と囁いた。

「気分、悪くなったらすぐに言ってくださいね?」

それだけ言うと、自らのシャツのボタンを外しながら改めてローに覆いかぶさる。
途端に首に巻きついてくるローの腕。求められるままにキスをしながら服を脱がせてみれば、
頬だけでなく体中がほんのりと赤く色づいていてキャスケットの劣情を誘った。
片手を腰に回して抱き締めると、素肌に触れるいつもより高い体温が心地よい。

「…ぁ、んっ、はぁ」

キスを落とす度に小さく上がる甘い声は、静かな室内によく響く。
長い長い愛撫に解される間、どんな小さな快感も残さず拾ってそのたび小さく震えていたローの身体は、
キャスケットの吐息が内腿に触れた瞬間、とうとう涙を零した。

「ん、もう…キャス、おれ」
「ん?」
「それ、いいから…、はやく、挿れて」

いつもなら、身体中に唇で触れた後はローを一度イかせてからしか挿れないけれど
今日はもうさんざん我慢したおかげで、もう限界だった。
キャスケットは自分のモノをローの入り口にあてると、耳朶にキスをして腰を前に進めた。

「力抜いて、ください」
「ぁ!――っあ、あ!!」

我慢が限界だったのはキャスケットだけではなかったようで、
ローの腰は奥へと誘うようにゆるゆると動きながら締め付けてくる。
快感を待ち望んでいた身体にはその刺激は強すぎるもので、
キャスケットはイきそうになるのを息を止めてなんとか堪えた。

「…っく」
「ん、キャス、はぁ、…スキ」

そんな中、耳へ届くのは、ローの口から漏れる喘ぎのなかにある、自分の名前と「好き」の言葉。
ただ名前を呼ばれて、好きだと言われる。ただそれだけなのに、
目眩がするくらい嬉しくて、腕の中のローのことがどんどん愛しく思えるだなんて。
キャスケットは、そんな風に思えるくらいローのことを好きになれたことがまた嬉しくて、
行為の途中だというのに、すこしだけ涙目になってしまい、慌てて顔を見られないように抱き締めた。



****
「ねぇ船長。そんなにクリスマス楽しみだった?」
「え?」
「今日すごく楽しそうだったから」
「ああ、…でも楽しみにしてたのはクリスマスじゃねぇよ」

じゃあ何を楽しみにしてたの?そう問いかけるキャスケットにきゅっと抱きついたローは、
そのまま、顔が見えないようにして呟いた。

「だって今日はおまえ、朝までおれと一緒にいてくれるんだろ?」
「え」
「あー、部屋割り間違えたな、次に船乗り換えるときにはキャスとおれの部屋は隣同士にしような」
「……」
「そしたら毎日でも一緒に寝れるよなぁ。 ……?キャス?」

キャスケットはそのあまりに可愛らしい言葉に呆気に取られていたのだが、
ふと我にかえると、いつまで経っても返事をしないキャスケットの目の前で、
手をひらひらさせるローのことを思いっきり抱き締めた。

「船長、かわいい!スキ!!!」
「う、わ ちょ、苦しい!離せ!バカ!」
「船長がいいなら、おれいつでも一緒に寝ますからね?言ってくださいね??」
「あー…はいはい。ありがとな。わかったから、力加減は考えてくれ」
「スイマセン」

ローは、こいつ聞いてねぇなと思いながらも、愛しい恋人の耳に唇を寄せて
とりあえず今日はさっきみたいに腕枕で寝させて、と甘えるのだった。





end

改定履歴*
20091123 新規作成
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