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準備をしよう

――ヤバい、ユースタス屋!うち、ツリーがない!
そのトラファルガーの一言で、おれたちは二人そろってツリーを買いに来た。
ふたりで暮らし始めてからまだ日は浅く、クリスマスを一緒に過ごすのは今回が初めて。
イベントごとに二人で出掛けて、何かしら買い揃えるのは、なんだか楽しい。

****
手始めに寄った大きめの家具屋のクリスマスコーナーには、
大きさも形も様々なツリーが所狭しと並んでいた。
最新のものは、ツリー自体が光るんだ。
ファイバーツリーって言って、元々飾りも付いていて、
コンセントに繋げばいくつもの光でキラキラと光って、確かにキレイ。
最近の技術の進歩はすげーな、そんなことを思いながら隣にいる筈のトラファルガーに声を掛ける。

「おい、どれにする?」

返事が聞こえないのを不思議に思って振り向いてみれば、そこにいたのは全くの別人。
慌てたおれはスイマセンと一言告げてあたりを見回す。
おい、アイツどこ行ったんだよ!

暫く探しても見つけきれなくて、店を出てみれば、
見つからない筈だ、アイツは隣の小さな雑貨屋の前にいた。
じっと見つめるその目線の先には、ひとつのクリスマスツリー。
先程まで見ていたものとは全然違っていて、ただ、木が本物みたいな造りのものだった。
あまりにクラシックなそれは、もちろん光りもしない。
でも、悪くない。トラファルガーが気に入っているのなら、尚更。

「それ、気になんの?」
「…ん。」
「よし、んじゃ決まり」
「え、いいのか?」
「おれもそれ、気に入った」

途端にトラファルガーはくしゃっとした笑顔でおれを見上げる。
その笑顔、それ反則。何でもしてあげたくなる。

でも、おれはそのすぐ後にろくに確かめもせずに
そのツリーに決めたことをほんの少しだけ後悔することになる。
店頭に飾ってあるツリーを、と告げた時に店員が少し気まずそうに言った一言で。

「こちら、箱がありませんがよろしいですか?」

――つまりそれは、これをそのまま持って帰れって事か?
この、子供の背丈くらいありそうなこれを、このまま…?

一瞬怯んだが、でも、今さら引き返せない。
だってもうさっき、トラファルガーの笑顔を見てしまったんだから。
おれに言える答えはひとつだけだ。

「はい。」



****
帰り道、全身に浴びる目線と、クスクスと聞こえる笑い声は気のせいなんかじゃないだろう。
現に隣にいるヤツが笑ってるんだから。

「おーい、ユースタス屋、すごい目立ってるぞ」
「…わかってるつーの」
「とってもよくお似合いデスヨ」
「うるせー!」

まあまあ、といいながらトラファルガーは手に持ったソフトクリームを口の傍に持ってくる。
このクソ寒いのに、ソフトクリームだなんて…と思ってみて気付いた。
ソフトクリームを好きなのは、トラファルガーじゃなくて、おれ。
つまりは、お礼のつもりなんだろう。全く、コイツは素直じゃない。

「おいしい?」
「おー」
「そっか!」

ほら、またあの笑顔で笑う。だからその笑顔は反則だって。
ああでも、おれも笑ってるんだろうな。きっと。
だってほら、こんなに幸せなんだ。

「キッド」
「ん?」
「…ありがとう」

――手が、ツリーで塞がっていてよかった。
もしこの両手が空いていたなら、人目なんて気にせず抱き締めていただろう。
照れくさそうに俯いて礼を言うトラファルガーがとても愛しくて、
早く抱き締めたくて、家へと向かう歩調を速めたのはコイツには秘密だ。





end

改定履歴*
20091121 新規作成
わがままローさんにとことん甘いキッドが好きです!(*´`*)
家に帰ったら思う存分イチャつきながら飾りつけしちゃってください^^
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