top * 1st * karneval * 刀剣 * utapri * BlackButler * OP * memo * Records

メルト

朝、目が覚めて 真っ先に思い浮かぶことは
今日の天気でも授業のことでもない、あなたのこと。





「…〜〜っ、やっぱりちょっと、切りすぎたかも」

朝の弱いおれがおきるのは、いつも電車に乗れるか乗れないかのぎりぎりの時間。
その忙しい中、朝食より何より寝癖を直すのに夢中になるのも、
昨日切ったばかりの髪をひっぱりながらこんな独り言をいってしまうのも、
駅までの片道5分の距離を、全速力で走ってしまうのも。
『らしくない行動』のすべてはあなたのせい。

「トラファルガーおはよ。きょうもちっこいな」
「!会長、ちっちゃいは余計です」
「もう口癖なんだよな」
「…開き直らないでください。おはようございます」

ざわつく駅のホームで、この声だけがおれの耳に届く。
寒さに縮こまっていたからだもこころも一瞬で溶かしてしまう、魔法の声。

「さっみー」
「会長、耳まっか…帽子かぶったらどうですか?」
「おまえはまた完全防備だな。ふわもこの帽子にマフラー」
「だってさむいの嫌いなんです」
「そっかそっか」

おれの頭をぽんぽんたたくように撫でながら笑う会長の笑顔は、おれの朝食みたいなもんだ。
これを見るのと見ないのではその日一日のやる気と元気が全く違う。
今日も見れた、よかったなんて自己満足に浸ってると、
自然に頬がゆるんでいくのに気付いて慌てて足元を見る。

「あれ?」
「え?…わっ」

寒さと赤面対策に深く被っていた帽子がふわっと持ち上げられて
つられて顔をあげると、目の前10センチもない距離に会長の顔があった。
(認めたくはないが)お世辞にも背の高いとはいえないおれと、
バスケ部特待入学の会長は15センチくらい身長がちがって、
普段はこんなに近づくことはないからびっくりしすぎたんだ。
変な声がでてしまったのはそのせいなんだ、って心の中で言い訳する。

「おまえ、髪切った?」
「…はい」

――気付いてもらえた。

ほんのちょっとの変化なのに、
帽子を被っていたのに。
どうしよう、うれしい。

突然の嬉しさにそれ以上の返事ができないおれをみて、
会長は「やっぱりな」って笑う。
おれの大好きな笑顔で。



melt. 恋に落ちる音がした








更新履歴*
20110127 新規作成



←main
←INDEX

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -