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恋するミュータント

たとえば この異形のからだと引き換えに
生まれついて持っていた予知能力もテレパシーも
世界制服も大虐殺も簡単にできる力も、人智を超えた全ての力を
すべてきれいに捨ててしまえば人になれるなら

おれは迷わずそっちを選ぶ

だってそうしたら大好きな人にスキって言ってもいいんだろう?
狭い檻の中で生きてるおれにとってただひとつの生きる意味は
おまえに名前を呼ばれることなんだ
そのきれいな漆黒の瞳に自分が映るたび
どきどき胸が高まって、どうしようもなく嬉しくなる

――好きなんだ

おれを呼ぶ甘くて優しい声も、
ゆっくりおれを撫でてくれるおおきな手も。
緑色の液体が入った注射器を持って、
優しく笑いかける、その笑顔も全て。

――ペンギン、好きだよ

でも、それを言う勇気もそんな資格もない。
だっておれは、ただの『実験動物』だから。

おれを呼ぶ甘くて優しい声も、
ゆっくりおれを撫でてくれるおおきな手も。
全部、実験のため。

そんなことわかってる。わかってる。けれど。
それでも、うれしいんだからしかたないだろ?
好きだと口にはださないから、
せめて心の中で想うくらいは許してほしい。

「ぺんぎん」
「どうした?ロー。…気分が悪くなってきたか?」
「…ううん」

ほら、名前を呼べば、すぐにおれの瞳を見てくれる。
少しの変化も見逃さないように、じっと。


だいすきな声がおれの名を紡ぐ、甘い響き。
おそらくこれを聴くのはこれが最後なんだろうな。
そんな予感がうっすらと脳裏をよぎるけれど、
それでも、嫌な気分にはならない。

おれは、空になった注射器を持つ大好きな手に
そっと手を添えて、そのまま目を閉じた。



ああ、もしまた目を開けることができたなら
3つの目も6つの手足も余計なものは全部なくなって
全部全部人間と一緒になってればいいな。
そうしたらきっと、おまえに好きっていえるのに。







更新履歴*
20110127 新規作成



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