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変わらない想い -2-

声が、聴こえる
懐かしいような、泣きそうな声

……だれが、おれを呼んでるんだ



****
ゆるゆると浮上してくる意識にあわせて、ゆっくりと瞼を開ける。
ふかふかのベッドに、消毒液のにおい。なんだか、懐かしい感覚だ。
ベッドに起き上がろうとしたおれを襲ったのは、左腕に走る鋭い痛みだった。
見ればそこには、丁寧に包帯が巻かれている。
ぼうっとしか働かない頭で必死に記憶を辿れば、戦闘で負傷したことを思い出した。

「…怪我なんて、久しぶりだな」

そうだ。たしかに久しぶりなんだ。
航海を始めたばかりのころならともかく、最近はめっきり怪我なんてすることなかったのに、なぜ…?
そんなことを考えながら目線をぼんやりとその腕の先に滑らせれば、
おれの左手を握ったまま転寝をしている人物が目に入る。

誰、だろう。こんなクルー居たか?
白衣を着ているから、医者だろうか。
…おれはこの人に、手当てしてもらったんだろうか。

「……ん…」
「あの、」
「――ペンギン!よかった、目が覚めた…」

おれの看病をしてくれていたらしいクルーは、綺麗な藍の瞳をした男だった。
触り心地のよさそうな短い髪も、陽に透けると同じ色。両耳には2つずつ、金色のピアス。
…おれの左耳にひとつだけついているものと同じのような気がする。

「おれの名前を知ってるのか?手当て、どうもありがとう」

ごく自然に礼を言っただけだ。
なのに、次の瞬間、目の前のクルーの表情が驚いたように固まる。
…おれは何か、おかしなことを言っただろうか。

「ペンギン…ここがどこだかわかるか」
「? 船、だろう?ハートの海賊団の」
「じゃあ、…おれが、だれだかわかるか」
「初めて見る顔だ。…もしかして、以前にも会ったことがあったか?すまない」

おれの言葉は、どうやらそのクルーを傷つけてしまったらしい。
初めて会ったはずなのに、…その思わず見惚れてしまいそうなくらいに整った顔立ちが
悲しそうに歪むのが、おれの胸をひどく締め付けるのはなぜなんだろう。



****
「…ペンさんそれ本気で言ってんの?」
「お前にこんな嘘ついてどうなるっていうんだよ」
「そうだけど。でも、じゃあ、じゃあさ、
船長…ローさんとどんな関係だったかとかも全然覚えてないの」
「関係も何も…おれはあの人が船長だってことすら覚えてないんだぞ」

その後、おれの目が覚めたと聞いて駆けつけてくれたキャスケットに聞いて驚いた。
あのクルーは、この海賊団の船長だと言うのだ。
そういえば、記憶のどこを探しても『船長』らしき人の記憶がすっぽり抜け落ちている。

「ローさん、すげー心配してたよ」
「ああ…うん」

たしかに、心配されていた――気がする。
けれど、あの深い藍の瞳には、心配と不安と、
…それだけじゃない何かが浮かんでいた気がするんだ。

「あ、あのさ!でも突然記憶がなくなったのなら、もしかしたら突然戻るかもしれないし!
だからそう思いつめずに気楽に…っつっても無理かもしれないけどさ、その…おれうまく言えないけど」
「…わかってる。『船長』もそう言ってた。ありがとうキャス」
「うん、おれでよければ何でも力になるからさ、大変だろ?
副船長の仕事とか色々…おれできるだけ手伝うよ!」
「は?副船長?だれが?」



目を覚ましてから、本当に驚くことばかりだ。
おれはただのクルーだとばかり思っていたら、まさか副船長だったなんて。
おれの記憶は、いったいどれくらい欠けているんだろう。
…いつになったら、戻ってくれるんだろうか。





end

改定履歴*
20100804 新規作成
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