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変わらない想い -1-

めずらしく長引いているケンカの最中で普段どおりの意思の疎通が取れなかったとか、
体調を崩していたとか、そんなのは理由にはならない。
ただ、おれが弱かっただけだ。

あなたを守って、自分も助かる方法を取れなかったのは、
おれの鍛錬が足りなかっただけ。



****
海の真ん中で、敵船の襲撃を受けた。正確に言うと、
海の彼方から真っ直ぐこちらに向かってくる敵船が見えた時から、
船長であるローは迷わず迎え撃つことを選んだ。

相手がその気ならばこちらも容赦はしない。
襲って殺して奪う、海賊をやっていればこんなのいつものことだ。
それについてとやかく言うつもりはない。

ただ、ひとつ違ったのは、天候が悪かったこと。
グランドライン特有の安定しない気候はそろそろこの海域を雨雲で覆おうとしていたし、
そのほんの数十分前の照りつける真夏のような天候でクルーは疲労しきっていた。
おれも例に漏れず、頭痛がひどい。

それでもローに避けるように提言しなかったのは、数日前のケンカが長引いていたから。
少しは苦戦して、いつもおれから折れて当然と思っているローに、たまには反省して欲しかったから。
嵐が近づいているのがわかっていたのに、それを船長に伝えなかったのはおれの落ち度だ。
迎え撃つにはすべての条件が悪かったのが、わかりきっていたのに。

敵船の船長は能力者で、その実力はかなりもの。
普段ローの出る幕なんてないのがウソのように、ハートの海賊団は劣勢を強いられた。

船長同士が交戦している傍で、おれが相手の船の二番手を討ち取って、
ようやく勝利が見えてきたと思った瞬間――
倒れたと見せかけていた敵が放った銃弾が、鈍い光を放ってロー目掛けて飛んでくるのが、
スローモーションのように見えたんだ。

その小さな鉛の弾がローを捉えそうになって、おれは迷わず身代わりになることを選んだ。
あなたを失うことに比べたら、この身が傷つく痛みなんて何てことない。
そう思ったから。



相手の船長は、ローによってバラバラにされて海に落ちた。
最悪なのは、そいつが死に際にローを海に引きずり込んだことだ。
悪魔の実を食べた代償で泳ぐことができないローが、嵐の直前の海に落ちる。
それは当然死を意味する。

おれは、すぐさまローの後を追って海に飛び込んだ。
薄暗い海の中かすかな光を頼りに、力なく沈んでゆくローを見つけて、なんとか海面へと押し出す。
脈も呼吸も、ある。よかった。

直後におれたちのもとに駆けつけたクルー達にそのからだを託したころには、目の前が霞んでいた。
見れば、ローを抱きとめていた左腕は、先程受けた銃弾で真っ赤に染まっていて、
それを認めた途端にくらりと意識が遠のく。力が、入らない。
もしかしたら、血を流しすぎたかもしれないな。……ちゃんと、再び目が覚めるか自信がない。
でもローのことは助けられた。それだけで十分だ。おれは、それだけを思って目を瞑った。



ああ でもこんなことなら仲違いしたままになんてしなければよかったな
もっとちゃんとすきだよと伝えておけばよかった



――ロー、あいしてるよ



せめて最期に、この声があなたに届けばいいのに





end

改定履歴*
20100802 新規作成
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